「…うざいとか言ったのに」
「…あれは」
「同情なんてしてないのに…」
「…」
教室とはまるで雰囲気が違うじゃないか。なんなの、今の京谷君、怖くない。そうだわたし、今なら怖くない、狂犬なんて怖くない!
「だっだいたい、今更言うってどうなの!?中途半端に仲良くして、気を持たせて落とすってそれ最低だよ!?わたしは本気で京谷君と仲良くしたいだけなのに、なのに京谷くん…」
だめだ、涙がまたこぼれて来た。もう、もっと言いたいのに、今なら全部言える気がするから、そしたら京谷君だって私とまた話してくれるかもしれないんだし。目をこすって、一度息をつく。そして。
「きょうたにく、」
「お前好きなやついんだろ」
「えっ!」
「…昨日、言ってたじゃねーか」
あ、あれは首をしめられたから…!なんて言えるはずもなく、こくりと頷いた。もしかして京谷くん、自分のことじゃないと思ってるんだ。
「…俺と話してたら好きなやつに避けられるぞ」
「…避けられるはずないよ」
「わかんねーだろ」
「だから?だから今さっき、ああいうこと言ったの?」
期待をこめた瞳で、京谷くんを見つめた。ギンとした瞳と目が合い、数秒沈黙が続いた。
「…そうだ」
この時以上にほっとしたことはないだろう。なんだ、やっぱり京谷君は優しいんだ。私のために、ああいって離れさせようとしたんだ。京谷君、京谷君。私、すっごく京谷君が。
「好き」
京谷君が、好き。
「…………は?」
……あれ。
「……あ、い、いま…」
もしかして私、言葉に…?
「やっ、えっと、好きって言うのはね?あのーなんだろう!あ、あれだよ!私は京谷君という人間が好きなの!だから決してその〜なんていうんですかね男女の?恋だの愛だのそういうことではなく…!」
何言ってるんだろう、私。
京谷君すっごくびっくりしてる。そりゃそうか、だって私言っちゃったもん、爆弾を投入させちゃったもん。
「…そうか」
な、な、なんでそこで納得するのーー!?いや納得してくれて嬉しいけど、嬉しいけども!背中に冷や汗が伝うのを感じながら、にへらと笑った。
20151221
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