「うわあああん聞いてよアルビノちゃあああん!京谷君がうざいから話しかけないでってえええ」

持っていた生物部の鍵でさっと教室を開けてアルビノのネズミのところまで駆けていった。私のオアシスアルビノちゃん…!くりくりの瞳を私に向けてきて、ハートを撃ち抜かれた。すずっと鼻水をすすって目をこする。

「あそこまで言わなくてもいいよねえ…」

いくら私でも傷つくよ…。京谷君、今までうざかったのに言わなかったのかな、我慢してたのかな。だとしたらなんて忍耐強いんだ…。くっ、京谷君の顔ばっかり思い浮かんじゃうじゃん。もう話しかけれないのにさあ、ばかじゃん…!

「あああもうやだああ」
「アルビノが怯えるからやめろ」
「ぐすっ」

入ってきたのは生物部部員、眼鏡野郎。…いやなんで!?なんで入ってきた!?授業中だよねえ!?

「なんで!?」
「お前が今会いたいであろう人を連れてきた」
「え?」

スーっとドアから顔を出して入ってきたのは、紛れもなく京谷君だった。
おい!私がいま一番会いたくない人だよ!なんで!おい!眼鏡かち割るぞ!

「…まあ言いたいことは分かるけど、とりあえず俺は案内しただけだから、んじゃな」
「イヤイヤ待ってよ!」

かっこつけて背中を向けたまま手を降り出て行った眼鏡。残されたのは私と京谷君、と他の動物達。私と京谷君の間に隙間風が吹く。

「…お前の友達に追いかけろって言われて、でもどこに行ったのかわかんなくてよ、探してたらあの眼鏡がいたから、聞いてみたらここだって言われた」
「えっ、ちょっと待ってあいつと知り合い?」
「お前と二人で歩いてるの見たことあっから」
「…」

びっくりした、まさかあの眼鏡が京谷君と友達なのかと思ったよ。私でさえも友達だと思われてないのに。

「…泣かせちまったな」
「……」
「…っと、よ」
「…」

今更何を言うつもりなんだ。今さっきはうざいだのなんだの言ってたのに、私の友達に言われて追いかけたって…自分の意思じゃないのかよ!ばか!珍しく弱っている京谷君にわたしは涙ぐんだ。


20151221



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