次の日、普通に登校して、普通に席につく。ボーッとしていたら、ザワザワしていた教室が一瞬静かになる。それは京谷君が来たという合図で。私はガタりと立ち上がった。

「おはよ!京谷君!」
「……」

あれ?今日は挨拶してくれない。京谷君は私を睨んで、そのまま席についた。静寂が続いていた教室が、いつの間にか騒音だらけの場所に戻る。…あれ。何で、何で無視するの?だって昨日挨拶してくれたじゃん!何で何で!私は足音を響かせながら京谷君の元へ歩いた。

「無視はよくない!」
「…うるせえ」
「挨拶したのに〜目も合ったのに〜」
「うぜえ」
「…ごめんなさい」

今日は冷たい日なのかな。というか私に冷たくない日は無いんじゃないのかな。でもいいんだ。少しずつでも打ち解けていけば。というか私、最初に比べたらかなり仲良くなってない!?一緒に帰ったりもするし、一緒にバレーもしたし、ベンチに座って語ったし…かなり仲良し!?かなり仲良し認定できるくない!?

「京谷君、私たちって仲良し?」
「…は?」
「仲良しだよね!ね!今日さ生物部寄ってかない!?アルビノちゃん見せてあげる〜」
「…お前さ」
「ん?」

はあ、とため息をついて京谷君は私をギロりと見る。う、怖い。何言われるのかな。俺もそう思ってたとこ、とか?うはー、それだったら嬉しい。嬉しいぞー。だけども京谷君はそんなことを言うような雰囲気でもなく。

「俺ばっかりに絡んでるから他のやつらに避けられるんじゃねーの」
「え?何急に。別にそんなことないよ」
「…俺と話してたら人寄ってこなくなんぞ」
「そうかなあ」
「だから、お前も…」
「…?」
「……なんでもねえ」

そう言ってぷい、とそっぽを向いた京谷君。どうしたんだろう、急にそんなこと言って。もしかして、いつもそんなこと気にしていたのかな。何だろう、そう考えると心臓が跳ねて跳ねて仕方ない。私のこと考えてくれてたんだ。どうしよう、何だこの気持ちは…!

「京谷君大丈夫だよ!私は京谷君から離れていったりしないよ!」
「…」
「だって、私京谷君のこと好きだもん!」
「!」

思ったよりも大きな声で言ってしまったため、また辺りがシン、と静まる。あれ、これやっちゃった系…!?いやいや!どうせみなさんあれでしょ!告白だと思ってるんでしょ!違うから違うから!と心の中で騒ぎながら、慌てて後ろを振り向く。

「今のは友達としてです!告白じゃないです!」

そう言うと、「なんだあー」とつまらなさそうな声。「告白かと思った」とか色々飛び交う中、後ろを向くのがたまらなく怖かった。だって、何か視線が痛いよ。目からビームでも出てんのかってぐらいだから。ゆっくりと振り向くと、一層睨みを利かせた京谷君。…うう。

「ごめんね、こんな風にしたくて言ったつもりじゃなくて…」
「…もういい」
「え」
「友達友達って、俺はお前のこと友達と言ったつもりはねえ」
「で、でも話せるやつだって…」
「…お前うぜーんだよ」
「え」

まるでドスをきかせたかのような声。い、今なんて…?

「…いちいち俺に話しかけてきてよ。同情してんのかよ。そういうのうぜえ」
「ちっちが…私はただ、京谷君と仲良くしたくて…」
「そういう馴れ合いとかが、うぜんだよ」
「!」

何で、それなら何で、今まで言ってくれなかったの?何で急に、言ってくるの。私、同情なんかしてないよ。ほんとに、本当に京谷君と仲良くしたくて話しかけてるだけなのに…。じわり、と涙が溜まって、零れる寸前にくっと堪えた。

「きょっ…京谷君のバカ野郎!」

私はくるりと踵を返して走り出した。「ユイコどこいくの!」という友達の声も無視して、走って、走った。


20151218



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