「おおおおっおはよ、京谷くん!」
「…おう」

次の日、靴箱の前でばったりあった私は京谷君に挨拶した。なんだか、昨日の今日でドキドキするなあ。…私、京谷君のこと意識してるのかな。

「きょっ、今日は…今日はいい天気だね!」
「…お前なんかおかしくね」
「ええ!普段と一緒だよ!?」
「…」

明らかにテンパってるのが分かるみたい。京谷君は不思議そうに私を見てはあ、とため息をついた。あ、なんかいまちょっと傷ついた。

「お前はいつも違うな」
「え?」
「コロコロ変わって、疲れないか」
「へ、疲れるってか…これが自分だし」
「…」

何だろ、難しい話されてる。ていうか普通に隣に並んで一緒に話してる。周りからすごい目で見られてるなあ。きっと下僕か何かだと思われてんだろうね。

「…お前はみてて飽きないな」
「………そ、そっかあー…」

飽きないのか、そっかそっか。よかった、こういう自分で。京谷君に飽きられないや。…ん?なんでこんなに自分、ドキドキしてんだろ。なんでこんなに、うれしいんだろ。

「私バカだからさ、お前みると考えてることとかどうでもよくなるって言われたことならあるよ!」
「…あー」
「えっ、納得しちゃう!?言っとくけど、私にだって悩みはあるよ!?」
「…たとえば」
「えっ、えーっと。あ、アルビノちゃんが最近つれないかな…なんて」
「…」
「そんなことかよ、って言いたいんですよね、はい。分かってます!」

ほんとは、まだあるけど。
京谷君で一喜一憂してしまうのは何でかなって、思ってしまう。
京谷君は私のことを無表情で見てきてすごく怖かった。やっぱ目つき悪いよ…。バッグの紐を掴みながらへこへこ歩く。…あれ、そういえば私普通に歩いてる。…歩幅、合わせてくれてる?

「…まあ、お前らしいよな」
「へっ」
「その悩み」
「あっ、あー…ははは、生物部ラブ!だからね…」

京谷君が、私らしいとか言うから。
だってそういうこと言うのは、仲良い人が言うもんじゃん。京谷君は、私のこと仲良い人だと無意識に思ってくれてるのかな。うれしいな、そうだとしたら。今は釣り合いがとれないけど、いつか京谷君の――

「(…何考えてんだろ)」
「何ヘコんでんだ?」
「うおうなんでもありません!私は元気!」
「…やっぱお前、コロコロ変わるよな」

京谷君って、案外見ててくれてるんだ。
なんでだろ、こんなに嬉しいの。ううん、きっと分かってるけど知らんぷりしてるだけ。認めてしまえば、楽なのに。

20151123


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