10,000hit企画book | ナノ


「赤葦くんっ…本当に私重くない?」
「重くない」

きっぱりと言ってくれる赤葦君のおかげでどこかほっとした。私はコケて足をくじいたのを赤葦が見たのがキッカケで今こういう状況になっている。こういう状況というのは、赤葦君におんぶされているという状況だ。

「…ご、ごめんねっ…私いっつも鈍臭くて…毎回赤葦君に助けられてる…」
「そんなこと気にしなくていいよ」
「そ、そっか。いつもありがとう赤葦君」

どういたしまして、と赤葦君。本当に毎回助けられてる。私が断れない性格だから掃除当番とか変わってと言われると肯定してしまってその度に赤葦君が自分のことは自分でしろと言ってくれるし、重いノートを運ぶという雑用を任されても赤葦君が毎回半分以上持ってくれて助かっている。購買でパンが買えなかったら代わりに買ってくれるし…本当に赤葦くんには助けられてばかりなのだ。

「今日はひょこひょこ歩きだなあ。大変そうだ」
「俺が助けるから大丈夫」
「そんな、赤葦くんにこれ以上迷惑かけられないよ」
「迷惑なんて思ってないから」
「ええっ…」

赤葦君て凄くいい人だと思う。普通ここまで言う人はいないよ。いい人すぎて自分がグズなのを呪いたくなる。赤葦君みたいないい人に助けられて私は幸せだなあ。

「赤葦君いい人っ…赤葦君の彼女になる人は凄く大切にされるんだろうね」

すごい面倒見てもらえそう。赤葦君の彼女って予想つかないな。どんな子が好みなのかなあ。あ、この角曲がったら保健室だ。

「それってフリなの?」
「え?」

急にそんなことをいうから吃驚してしまう。フリ、ってなんだろう。どういうこと?と聞くとやっぱり何でも無いと言われた。何なんだろう、一体。

「わ〜到着。ありがとう赤葦君。もう下ろしていいよ」
「いや、ソファのところまで」

そう言って丁寧にソファのところまで行って下ろした。赤葦君、紳士だ。これでかっこいいんだからきっと凄くモテるんだろうな。私にはもったいないよ。

「足くじいたのね」

保健室の先生がそう聞いてきたので頷く。赤葦君、もう帰っちゃうのかな、と不安になってチラりと見ると目が合って、「帰らないよ」と言ってくれた。今すごい迷惑かけてるのに、帰っちゃ嫌だって思ってる自分がいる。私ってすごいわがままだな。

「靴下脱いでねー」
「はい」

先生は色々と薬品とか包帯とか出した。赤葦君は私の隣に立っていたので「座っていいよ」と言うと「いいよ」とだけ。何だか申し訳ない、私だけ座ってるのなんて。

「でも良かったわね、彼氏クンにおんぶしてもらって」
「えっ、か、彼氏じゃないです…!」
「あらそうなの?」
「はい…でも、とてもいい人です…」

それだけは分かってほしかった。すごいいい人、みんなに広めたい。赤葦君のほうを向くと少し照れていて「そんなの言わなくていいから」と言った。それに私はにこりと笑顔を見せる。

「はい、終わったよ」
「ありがとうございます」

包帯を巻かれるなんて始めてだ。暫くはこっちの足はローファーを履けないらしい。目立つかな、嫌だなあ。

「ん、運ぶ」
「ええっ!だ、大丈夫だよっ…」
「いいじゃないのおんぶされちゃいなさいよ」

ケラケラと保健室の先生は笑う。絶対からかってるんだから。ちらりと赤葦君を見ると「早く」と手を伸ばして待ってる。私はしぶしぶ赤葦君の首に手を回した。

「お願いします…」
「うん」
「気をつけてねー」

ありがとうございました、と保健室の先生に頭を下げた。赤葦君は来た時よりもゆっくり、揺れないように歩いてくれてる。そんな優しいところとか、世の女子は惚れるんだろうなあと思ったりしている。

「さっきさ、彼氏じゃないって言ったよね」
「え、うん」
「でも俺達、付き合ってる風に見えたってことだよね」
「そ、そうだね…でも赤葦君には迷惑な話だよね。赤葦君に女子が寄って来なくなっちゃう」

だから今こうやっておぶわれてるのも、少し後ろめたい。赤葦君が好きな女子がこの光景をみたらどう思うんだろうか。

「別に寄ってこなくてもいいよ」
「そうなんだ」
「俺好きな人いるしね」
「わ、じゃあこれを見られたらヤバイよ…!」

あたりをキョロキョロと見渡す。誰かわからないけど、これをみたら間違いなく勘違いしてるだろう。ごめんね赤葦君の好きな人…!

「…そういう鈍感なところは嫌だ」
「ええっ…(赤葦君に嫌われた…)」

やっぱり私見たいな人を相手するの嫌なんだ…。今だって本当は面倒くさいって思ってるのかも。実はちょっと重いって思ってるのかも…!

「好意がなきゃこんなことしないって、フツー」

赤葦君がぽつりと地面に会話をしているかのように呟いた。それに私は訳がわかんなくなって頭にハテナマークを浮かべる。

「とりあえず私のことは嫌いじゃないんだ、良かった」

良かった、嫌われてなかった。とりあえず明日はお礼に何かあげよう。今日凄い助かったから。赤葦君から大きな大きなため息が聞こえたけど、私はそれを気にせず何をあげるか考え始めた。

20151018

あさ様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
あさ様のサイトを突撃訪問して興奮しながら感想を送ってよかったなと思っています…いい思い出です(笑)こうやってリクエストしてくださり本当に嬉しかったです。甘やかされる、というリクエストでどうしようかと迷ったのですがこんな仕上がりに。話の半分はおんぶされているという状況(笑)楽しんで頂ければ幸いです。
それでは、これからもANKをよろしくお願いします。またあさ様のサイトに遊びに行きますね!

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