10,000hit企画book | ナノ


バイト帰り、ふああと欠伸をしながら、コンビニでお菓子でも買おうとコンビニに向かった。コンビニに入って、新発売のお菓子を一瞥してスナック系のほうに歩く。うーん、無難にこれにしようか…あ、一つしかない!これは買った!

「あ」
「あ」

ぱっと横を見ると、あたしと同じお菓子を掴んでいる学ランの他校生が。…しかも男。やばい、これは離したほうがいい、とあたしは手を離した。

「すいません、どうぞ」
「や、そっちが先だったし…」
「いやいや」

どうしよう、結構いい人みたいだ。…ここらへんで学ランなの鳥野高校くらいしかなかったような。ええ、鳥野高校からわざわざこっちまで来たんだ…それなら尚更あげないと。

「大丈夫です、また買いにくるんで」
「あ、いいですか…?」
「はい」

ニコニコと営業スマイル。バイトのくせだ。まあ別にいいか、次会うか分からないような人。諦めて違うのを見ていると、また隣に人の気配。なんか今日はこういうの多いのかなあ、違うコーナーを見ようとすると、手を掴まれた。

「今さっきの見てたよ、優しいね〜」
「…は?」
「俺にも譲ってくれたりしないの?」
「は?」

何か気持ち悪い人が手を掴んできた…!譲ってくれないの?ってまずそういう状況になってないじゃん。とりあえず手を掴むのを離してもらおうとぶんぶんと手を振ったら「かわいい〜」って言われた。気持ち悪い。今度は知らない高校だ。まじでキモイからやめてくれ、岩泉以外に触れられたら死ぬ病気だから、これ重症だから。今すっごいトリハダたってる。

「すいません、離してください」
「えー、可愛いじゃん、俺と一緒に半分こする?」
「しません」

空いてるほうの手でスナック菓子を指差す男にイライラがたまりながら即答。こんな絡まれ方したの初めてだわ…早く帰りたい。とりあえず店員呼んだほうがいいのかな?声をあげようとしたら、いっそう強く引っ張られた。

「ちょっと一緒にトイレ行こうか…」

はあ、はあと息が荒い。ま、待ってコンビニのトイレ狭いしそこで何をする気なの!?ちょ、声をあげたくても急にそんなこと言われてゾクゾクしてきたし怖くなって声が出ない。だ、誰か助けて!何で近くに誰もいないの!?と思ったら今さっきの鳥野高校の人と目が合った。助けて!って顔をしたがわかっていなかったらしく頭を傾げられた。いらっしゃいませー、と店員の声。もうこの際誰でもいいから助けろよ!と思いながらずるずるとトイレまで引っ張られていく。ゾワゾワして足が棒みたいに動かない。男はニヤニヤ笑って気持ち悪いし…岩泉!

「苗字?」

心の中で岩泉と叫んだら、本当に岩泉が来てくれたみたいだ。涙目になりながら、岩泉のほうに手を伸ばすと、岩泉は走ってここまで来てくれて、何してんだ!って相手の男に向かって叫んだ。男は怯んでそのまま走って逃げて行ったけど、助かったとばかりにあたしは腰が抜けてへたりこもうとしたところを岩泉が支えてくれた。

「おい、大丈夫か?」
「…大丈夫じゃない」

きゅ、と岩泉の袖を引っ張って、そのまま頭を岩泉の胸に預けた。まじで怖かった、コンビニでもこういうことする人いるんだって分かったから暫くコンビニには行けないかも。まだ心臓がバクバク言ってて、本当に岩泉がいてくれてよかった。

「よしよし、怖かったな」
「うん」

頭をよしよしと撫でられて、何だか涙が出そうになった。よかった、岩泉が来てくれて、本当に。今にも抱きしめたい気持ちで袖を離したら、

「あー!何そこでイチャついてるんですかー!」

及川君の声がした。

「えっ、今さっきの親切な方…!」
「飛雄、見ちゃ駄目だお前は。目に毒だ」
「うるせえ及川」

慌てて離れると今さっきお菓子を譲った子がそこにいた。どうやら知り合いみたいだ。ていうか、今さっきあたしがトイレに連れこまれようとしてたとき目あったのに助けなかったな。

「たった今怖い体験をしてきたところ。及川君もう帰ったら?」
「名前ちゃんってすぐ帰ったらって言うよね!」
「あの、さっきはお菓子ありがとうございました!」
「あ、はい、いいえ…」

頭をぽりぽりと掻きながら、岩泉の手を無意識に握っていたことに気づく。慌てて離そうとしたけど、岩泉が握り締めてて離せなかった。

「お前コンビにで何か買うもんあんのか?」
「もういいや」
「じゃあ帰るぞ、送る」
「ええ、俺は?」
「影山と帰ればいいだろ」
「ええ!」

いーわーちゃーん!と駄々をこねる及川君に岩泉は鉄拳を炸裂した。岩泉、かっこいい!とりあえず、お菓子は簡単には譲ってはいけないということが分かった。ああいう特殊な人がいるから。

20151101

ひみか様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
その女〜の番外編リク、とても書くのが楽しかったです!なぜか影山まで登場させてしまいました(笑)ハイキューキャラで絡まれたのを助ける予定だったのですが、緊迫感ないな…と思ってモブに(笑)
お気に召されたのなら幸いです。
それでは、これからもANKをよろしくおねがいします!



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