10,000hit企画book | ナノ


「ちょっと苗字さん、退いてくれませんか…!」
「ん?ああ、五色か。ごめんねー」

ドキドキしながら目の前の女に話しかける五色。目の前の女は五色と分かると少し横によった。横並びで歩かれるとこのようなケースがあるので大変迷惑である、が、このぐらいなら通り抜けれるだろうが五色はなぜかこの女に話しかけた。そう、五色はこの女に惚れているのである。
その女は、学年一の美少女と言われても誰しもが納得できるほどの美貌を持っていて、サバサバしていた。だから男にも女にもモテる。

「今日も真面目にしてんねー、五色は」
「なっ…そういう苗字さんは、今日も不真面目そうだな!」

そういう堅苦しい話しかたとか、本当真面目だと思う。と随分前に言われたことを思い出した。名前はくすりと笑って、「うるせーおかっぱ野郎」というと五色は右手で前髪をそろえた。「この前髪をバカにしたな!?」と言うと、「してない」とまた笑った。

「というか苗字さん、違うクラスの女子と戯れるのもいいが、移動教室なの
忘れていないか?」
「げっそうだっけ?ちょ、あたしもう行くね!」
「はーい」

そこにいた女子にそう言い残して自分のクラスへと戻っていく名前を見て、はあとため息をついて歩き出そうとした、ら。「五色!」と呼ぶ名前に五色は振り向いた。「一緒にいこー!待っててー!」と叫んでいるので、仕方ないなあと呟きながらそこで待っていることにした。暫くして、名前はやってきた。

「五色が教えてくんなかったら遅刻するところだったよー、ありがとね」
「次が移動教室だって忘れていたバカを見逃せなかった俺が偉いってことだな」
「はあ?今なんつった?」
「おい、二の腕つまむな!」

親指と人差し指で二の腕をぎゅう、と握り締める名前に、五色は本気で痛いという眼差しで名前を見た。一体ドコからそんな力が出てくるのか、五色には謎だった。絶対後になっているだろうな…と考えながら階段を下りていく。彼女は俺と一緒に移動教室に行っているが、何も思わないのだろうか、と思い始めた。今だって自分は心臓がバクバクと言っているし、できればもっと近くに寄りたい。だけど彼女はただただ真っ直ぐ前を向いて話している。

「ちょっと五色、聞いてる?」
「えっあ、すまない、聞いていなかった…」
「もー、五色ってばー」

だって、いい匂いする。美少女っていい匂いもするのか…?と心の中で悶々としている五色。そんなこと露知らず彼女はまた話を続けた。

「でさー、その子が五色のこと可愛いって言ってたんだよね」
「っえ」
「可愛いかー?って聞き返したけど」
「なっ、なんだそれ!」

そういう話かよ、と五色はため息をついた。だけどね、と彼女。彼女は髪をすくって耳にかけた。長い髪でさえもつややかで美しい。

「五色は可愛いっていうより、かっこいい、じゃない?って言ったんだ」
「…え」

ガラにもなく、心臓がバクバク言っている。だって今、かっこいいと言った。直接的にではなく、その子に対してだけど。だけど彼女は自分のことをかっこいいと思ってくれているんだ、と考えたら教科書が自分の手汗でじんわりと汗ばんだ。

「五色がバレーしてんの見たことあんだけどね、結構かっこいいなーって思ったからそれその子に言っといた。よかったね、あたしのおかげで五色の株あがったよ」
「……苗字さんは、俺の事かっこいいって思ってるんだな」
「?うん、今言ったじゃん」

きっと彼女にとっては何気ない言葉だろうけど、五色にとっては大事な言葉で。それだけで今日のバレーの練習でさえもますます楽しめるだろうと考えた。彼女は鼻歌を歌いながら隣を歩く。さっきから歩幅をあわせているの、彼女は気づいているだろか。きっと、気づいていないんだろうな。

「ま、五色のことが好きだ、って言われたらさすがに応援とかはしないけどー」
「…え?」

素っ頓狂な声が出た。まさか、彼女からそんな爆弾発言が出てくるとは思わなかったから。足を止める五色より数歩先に歩いて止まる名前。上半身だけ少し後ろにそらして五色を見る。

「なーんてね、期待しちゃった?」

ははって笑ってまた歩き始める名前。それは冗談だったのか、と落胆しながら歩き始める五色。はあ、とため息をつく五色に名前は笑いかける。もうすぐ授業の場につくその瞬間、彼女は五色よりも足を速めて。

「まあ、五色好きなのは冗談じゃないよー」

なんてぽつり、と呟いてそのまま席に座った。「ちょ、苗字さん」と呼んだ瞬間にチャイムが鳴って、慌てて席に座る。今言ったことは幻聴ではないだろうか。ドキドキと心臓の鳴る音がうるさくて、彼女は今どんな顔をしているだろうか、と柄にもなく考えてしまった。

20151101

日葵様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
このリクエストを見たとき、まだ漫画を読んでいなかった私は誰…?と困惑していました。(笑)凄い強烈なキャラで、あの髪型最高ですね。笑 生真面目なんだなー、と思っていたんですが、同級生と話しているところが一つもない!だから同級生に対してはどんな口調なのか分からなかったので、想像で書きました。口調が分かり次第直したいとおもいます!そして甘々は難しい事をしりました…美少女設定をあまり使えていない、ということがたくさんありましたが、それでも日葵様が満足していただければそれでいいかなと思います…!
それでは、これからもANKをよろしくお願いします。




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