10,000hit企画book | ナノ


「おかえり貴大」
「ただいまー」

ネクタイを緩めながら靴を脱ぐ貴大はあくびをしながら部屋に入る。私は顔だけ出して「ご飯作ったよ」とだけいうと「サンキュー」とだけ返ってきた。

「うっわ、まじで美味そう」
「久々にご飯つくりに来たからね、ちょっとがんばった」
「ちょっとどころじゃないでしょやべえ愛してる」
「きもい」

抱きつこうとしてきたので軽く交わしながら食卓に並べる。肉じゃがとか、煮物とか。あとは野菜をどっかのレストラン風に盛り合わせただけだけど、見た感じすごい家庭料理って感じ。でも貴大はそれがいいんだよってニコニコしてる。

「お前まじで嫁になんね?俺の」
「あははどうしよっかなあ」

貴大の冗談は、冗談に聞こえないから困る。私は貴大の彼女だけど、こんな風にご飯作るぐらいのことできないし、それにまだ私は学生だし…。

「上手くいくと思うけどなー」
「私が就職したら考える」
「えー、俺もう一回言わねーといけねーの?」
「あはは、うん」

貴大は部屋着に着替えて急いで椅子に座る。ご飯をよそってあげて、自分の分も入れて座る。一緒に手を合わせて「いただきます」と言った。貴大は美味しそうにじゃがいもを頬張る。

「うまっ、お前こんなのお前しか作れねーよ」
「大げさ」
「いやいやマジ」
「貴大は私のこと大好きだなあ」
「まあ相当惚れ込んでんのは確かだな」
「……あ、これ食べよっと」

照れたな、ってごぼうをむしゃむしゃ食べながらにやりと笑う。ごぼう食べながらする顔じゃないでしょ、それ。確かに照れたけど、嬉しかったけども。

「ね、貴大」
「ん?」
「…私が就職するまで待っててくれるの?」

あと一年はかかるよ。なのに、またプロポーズまがいのことしてくれるの?貴大は味噌汁をすすってふう、と一息ついた。

「当たり前だ。ていうか今さっきの軽く流されたけど、ガチだったんだけど俺」
「えっ…」

なんだか真面目な雰囲気。私はこういう雰囲気苦手だなあ。いつもみたいに和気あいあいとしていたい。ていうか、ガチって。あんたそんなアホみたいな顔してガチって。

「就職するまで待つので、そしたら結婚してください」

貴大の言葉ひとつひとつが重みがあって、それで私の人生が左右される。
…うん、いいと思うこの人生。

「はい」
「うおっしゃ。お前の味噌汁が毎日飲みたい」
「ええ、またプロポーズ?」
「バリエーション豊富にしときたくて」
「どんなプロポーズでも受け入れるよ」

嬉しくて、嬉しくて。貴大が自分のことがどれだけ好きなのか伝わるみたいですごい変な感じ。でもこの感じ、嫌いじゃない。

「てかよ、就職してすぐ結婚ってどうなの?」
「別にすぐじゃなくてもいいじゃん」
「えー、俺は早く自分の子供がみたい」
「…ばか」

早すぎるわ、ってつっこむとにやりと笑って、早く就職してくんねえかな、とぼやかれた。


20151031

ユウ様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
花巻からプロポーズ、いかがだったでしょうか?見せ場を作ってからプロポーズの予定だったのですが序盤からさせてしまいました(笑)こういうほのぼのな感じの小説書くの楽しいです。リクエストありがとうございました!
それでは、これからもANKをよろしくお願いします。

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