10,000hit企画book | ナノ


「ええっ何よ急に予定なんて…」
「ごめんって。バイト入ってたの忘れてた」

今日は友達と駅前の新しく出来たクレープ屋さんに行く予定だったのに。なんとバイトが入っていたらしく断られた。くっそ〜。いっつも月曜はバイトが休みなのでいけると思っていたのになあ…。はあ、とため息をつくと友達は何か思いついたようにぽん、と手を叩いた。

「岩泉君誘えばいいじゃない」
「ええっ…む、無理だって…!」
「だって今日月曜でしょ?バレー部は月曜はオフって聞いたけど」
「そうだけどさ、そうだけどさ…!」

だって誘うなんて、無理だって、無理無理。いくら彼氏彼女という関係でも、ハードルが高すぎる。そ、そりゃあ一緒に帰ってはいるけど、たまに、たまにね!いっつもあっちからだし…あたしが誘うなんて、初めてに近い…。

「これも試練よ」
「うう…無理…諦める…今日は帰る…」
「だめよ。試練だから」
「……試練…」

試練ってかっこいいこと言ってるけどさあ、そんなの無理じゃん…!あたしが岩泉を誘えるような女ならたくさん誘ってるよ!わがまま超言ってるから…!

「てかさ絶対いいよって言うと思うんだけど」
「えっや、わ、わかんないじゃん!」
「えー?そうかな。岩泉君が断るかな」
「だって急に予定が入って今日は無理だって言うかも…」
「それあたしじゃんごめんって」

とにかく言ってみな、と友達は言う。とりあえずあたしは席に戻った。あたしだって岩泉と一緒にクレープ食べたい。でもあんまし好きじゃなさそうだし…。それに来てくれるのかな、嫌だって言うかも…。

「おい」
「わっ!…何よ」
「さっきから何考えてんだ?」
「へっ…」
「ずーっと難しい顔してっけど」

眉間に皺寄ってたぞ、って心配そうに覗き込んでくるから本当困る。
あたしはいつだって岩泉のことで頭がいっぱいなんだよ。今だって、岩泉のことばっかりなんだから。

「別に…何にも」
「はぁ?嘘つくな」
「…ちょっと」
「良いから言え」
「………今日、駅前にできたクレープ屋さん、友達と行こうと思ってて」
「おう」
「でも友達は、バイトが入って無理だって…」
「おう」

きゅっとスカートの裾をつかむ。怖い、岩泉に拒絶されたらって考えたらすごい怖い。でも、でもこれは試練だ!

「…………い、一緒に行かない…?」

ダメかな、って目を瞑った。どうしようこれ恥ずかしいし断られたらって思ったら冷や汗かいてきた。待って凄い泣きそうなんだけど…!

「おう、いいぞ」

ぱっと顔を上げるといつもの岩泉。や、やったあ…いいって!いいって言われた〜〜!

「ま、まあ断ろうとしたら脅してでも一緒に行かせてたけどね」
「こえーな」

へへって笑うあたし。内心ばくばく。でも、よかった、よかったあ…。

*

「うおっこれ結構うめーな」
「でしょでしょ!?あたしどこのクレープ屋さんでもこれって決めてるの!」

岩泉に自分の買ったクレープを食べさせる日が来るとは…。ちょっと帰ってカレンダーに丸しとこ。『クレープ食べさせた記念日』にしよ。しかも美味いいただきました。もうしんでもいい…!

「お前クレープ好きなのか?」
「んーまあ人並みにね。あ、でも一番好きなのはね、チーズケー…」
「…ん?どうかしたか?」
「いっいや、なんでもない!」

何かさりげなく好きなものを言ってしまった…わざとらしい感じする…。あたしこんなの好きなんだよって女の子アピールしちゃったよ…!いや嘘は言ってないからいいんだけど、何だこいつって…よかった岩泉気にしてないっぽい!というかそこまで考えてないよね!あたしはぱくりと食べ始めた。

「お前チーズケーキ好きなんだな。意外」
「はっ…意外ってどういう意味っ」
「まーでも、可愛いと思うけど」
「えっ…」

手にもっていたクレープを落としそうになった。岩泉はツナサンドっていう邪道(あたしにとっては)ジャンルを飄々と食べてるし。
そんな爆弾発言、普通にされちゃったら…困る…困る!

「お前生クリーム落ちるぞ」
「わっ…とと」

落ち着け、落ち着けあたし。
今はクレープを食べるんだ…!
それで食べたら、もうちょっとわがまま言ってみよう。あそこに行きたい、とか。今なら言える気がするから。岩泉、可愛い彼女のわがまま、聞いてよね。
チラりと岩泉を見たら目が合って、ニッと笑った。ああ、本当かっこいいんだから。

20151015

月乃様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
リクエストにて初デート…!1ページにおさまりきらないぐらいの長さになったので少し減らしたら微妙なところで終わりに…(最初が長すぎた)。ですが楽しんでくれれば幸いです。続編も今連載していますのでよければ見に行ってくださいませ。
それでは、これからもANKをよろしくおねがいします。






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