10,000hit企画book | ナノ


たまに、というか物凄く気になったりする、周りのこと。
だって、あの岩泉と付き合えたんだよ!?誰もが羨むはずじゃない!イジメられても仕方ない!…とか思うのに。全く何もないってそれはそれでどうなんだろう。いやいいけど、いいけどさ。ほら、よく及川君と付き合った子が地味な子とかだったらイジメられるみたいなさ。いやちょっと言い方が悪かった。派手な子が目つける感じの、怖い奴。

「そういう被害妄想なんてしなくていいわよバカね」
「だって、だって…!そんなの来てもへこたれないよう日々鍛えてるのに!」
「あんたの頑張りおかしいわよ」

はあ、とため息をつかれた。でもさ、でもさそうじゃん…!あんなかっこいい男ゲットして何も言われないはずないもの!何で、何で分かってくれないの!?あんな、イケメン、男らしい、気をつかえる、意外と優しい…!もう考えただけでゾクゾクしてきた。今すぐにでも岩泉に抱きつきたい…無理だけど、無理だけど!

「どうしたら抱きつけるかなぁ…」
「……普通に抱きしめればいいんじゃない」
「違うの!違うの!そこまでが難しいの!」
「岩泉君の前じゃあツンツンしてるもんね〜」

あんたの悪いところよーって友達にでこぴんされた。いたい。でもさ、仕方ないじゃん…!好きな人の前で素直になれる子ってそんなにいる!?あたしみたいな子たくさんいるじゃん…!絶対いるじゃん!あたしはその子たちと一緒に話したい。こういう性格じゃあどうしようもないよねって言って共感してほしい。…心の中では超うるさいよねって言って共感されたい。

「だって急に抱きついてさ…何?って言われたらどうすればいい?冷たい目でさあ、見下すみたいな…!ああ、ちょっとされたいかも…」
「気持ち悪いしめんどくさいよアンタ」

引き気味に腕を擦る友達を無視して妄想し始めた。ガチの拒絶とかじゃなくて、普通に冷たい目で「何?」って言われたい…!あ、また新しい扉が開く気がする…。ぞくぞくしてきた。

「…どんどん変態になってる」
「え?何か言った?」
「何でもないから早く彼氏のとこ行って来なさい」

最終的にめんどくさくなったのかあたしの背中を押してきた。目の前には岩泉が及川君と喋っている。憎き及川よ、そこを退け…!と念を送っていたらあたしに気づいたのか岩泉の肩をぽんぽんとしながら手を振られた。

「やっほー。君たち付き合えたんだよね、彼女も喜んでたよ。おめでとー」
「ありがとう…彼女?…ああ」

あの人、か。
あの人の前で大泣きしちゃったから顔を合わせずらい。それでもたまに見かけるけど、あたしに笑顔で手を振ってくれるんだ。意外と可愛い人だと、思う。…酷いこと言っちゃったな、いつか謝んないとだ。

「お前下向いてるけど、腹でも痛ぇのか?」
「えっ…いっ痛くない痛くない!大丈夫…」

ぱっと顔を向けるとその距離数十センチ。吃驚してのけぞりながらも言うとそうか、って安心したように笑うからきゅんって心臓が跳ねてしまう。い、今の笑顔もう一回…!

「もしかして俺邪魔?」

その言葉にキッと睨むと「ハイハ〜イ」と言って手を振って歩いていった。あたしはまだ及川君のことを許していない。小さいといった罪は重いんだから…!まあそのおかげで、岩泉から…フフフ、フフフ…。

「お前何笑ってんだ?気色悪ィな」
「はっ…!?わ、笑ってないし!岩泉の幻覚じゃない?」
「んなわけねーだろ、認めろバカ」

ぺし、とあたしの頭を叩いてくる岩泉。全然痛くない、手加減してくれてるんだって考えるとまたニヤけそうになる。あたしのこと女の子扱いしてくれてる。うふふ、ふふ…。…あ!また笑ってしまう!あたしはペチ、と頬を叩いた。

「おっ、どうした」
「ちょっとね」
「お前行動おかしいぞ」
「うるさいな」

岩泉の前だからじゃん、こうやって制御してんのも岩泉のせいなんだから。あたしはいつでも岩泉が一番で、岩泉に嫌われないために必死なんだから、そんぐらい分かってよ、ばーか。

「ハハ、ここ赤くなってんぞ」

ふに、と人差し指であたしの頬を触った。びく、と体は動いて、顔が一層熱くなる。岩泉のごつごつした指に触れられた、それだけであたしは幸せ絶頂で。でも恥ずかしいのも一緒で。そんなのお構いなしな岩泉は「どうした?」ってニヤニヤと笑いながらまたあたしの頬に触れる。

「ちょっ…もう!あたしのほっぺに触んないでよ!」
「ははっお前の頬ぷにぷにしてんだよ」

面白ぇって腹を抱える岩泉にあたしはまたぷりぷりと怒るんだろうな、と思いながらも顔はまた熱くなっていった。


20151014

つばめ様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
その女、重症につき。の番外編リクエストありがとうございます。続編を始めてしまったのであんまりがっつりとはできないのですが楽しく書かせていただきました。相変わらずのヒロインに私も愛着が沸いてきました。笑 お気に召していただければ幸いです。
それでは、これからもANKをよろしくおねがいします。



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