10,000hit企画book | ナノ


俺の事をよく構う人がいる。
その先輩ってのは女の子で、俺よりも小さくて、いい匂いがして、とにかく元気な人。最初は苦手だったけど、話しているうちに仲良くなれた。廊下ですれ違ったら必ず挨拶してくれるし声をかけてくれる。声が大きいからよく聞こえるんだ。

「研磨愛されてんなあ」
「……」
「おいおい、何で睨むんだよ」

その人はクロの友達で、そこから仲良くなった。(委員会が一緒だったらしい)たまに二人でいるのも見かけるからそれを見たら何だか胸がザワついてしまうんだ。もちろんクロにはそんなことは言わない。絶対笑うから。そしてクロは部活中でさえもあの彼女を持ち出してくる。今日は彼女が俺に声をかけたのを見つけたからだ。

「いや〜俺さぁ、アイツと研磨って中々不思議な組み合わせだと思ってたけどよ、結構あってんじゃね?って思うようになってよ」
「…何がいいたいの」
「付き合っちゃえば?」

ニタァと笑うクロを一瞥してスタスタとボールを拾いに行く。「無視か!」って後ろで叫んでいるけどそんなの無視。あの人と、俺が…?変なことをいうから、変に意識してしまうじゃないか。ありえないのに、そんなこと。あの人はきっと……。


「研磨くんみーっけ!」
「…苗字さん」

購買にてあの人は俺を見つけた。小さいのに、よく俺がここにいるって分かったな…。パンを持ってニコニコとしながら俺のほうに歩いてくる姿が可愛く見えて仕方ない。

「研磨君も購買?何買うの?あ、私はね、パンを買っちゃいました!」

えへへ、と見せてくる先輩に可愛いと思いながら「俺もパン」とだけ伝えた。

「何パン?もしかして私と一緒だったり?」
「……一緒、かな」
「やっぱりー?運命だね、私たち!」
「パン如きで運命とか…」

運命だよー!なんて嬉しがる彼女。嘘、買うものなんて何も決めていなかった。だけど、彼女がそんなことを言うから買うしかないじゃないか。良いんだ、嬉しがっている彼女が見れて。

「あ、じゃあ買ってくる…」
「うん!あ、ごめんね引き止めて!」
「ううん…」
「じゃあばいばい!」

手を振られ、それに頭を下げながらパンを買いに行く。
なんとなく後ろを振り向くと、クロがいて、クロと喋っていた。楽しそうで、やっぱり彼女はクロのことが好きなのかな、って思ってしまう。いや別に、彼女が誰を好きとか俺には関係ないんだけど、関係ないけど…「ちょっと!前つめて!」後ろの女子に言われたので慌てて前につめる。駄目だ、彼女のことを考えるとぼーっとしてしまう。

「あー、このパンもう売り切れてて」
「あ、じゃあ他ので…」

運命なんて、嘘だ。
そんなのどっちかが相手に合わせてるだけだ。どっちかが頑張ってるから片方は運命なんていえるんだ。運命なんて信じない。お金を払って購買から出た。彼女とクロはまだ喋っていて、それを一瞥して歩いていく。「研磨!」と呼ばれ振り向くとクロはにたにたと笑っていて、「こっちこいよ」なんて言う。少し顔が赤い先輩を見て「いい!」なんて声を張り上げて走って教室に戻る。
見たくなかった、クロと話しているところも、彼女のそんな顔も、全部、全部。運命だ、なんて笑って俺を振り回して、結局俺の事なんてなんとも思ってないんじゃないかって思うから。

「…研磨くんっ」

ぱっと後ろを振り向くと、彼女だけが走ってきていてぴたりと足を止めた。何で…。

「研磨君、怒ってた?」
「…怒ってない」
「ほんとに?」
「うん」

ほら、何も分かっていないじゃないか。怒ったんじゃなくて、見たくなかった、それだけ。何でわざわざ俺を追いかけたんだろう。それが聞きたかったから?彼女ってそういうの気にしない人だと思っていたけど。

「よかった、研磨君怒らせたかなって思って」
「いや…」
「…あれ、パン違う」

慌ててパンを後ろに向けたけど遅かったみたいで。顔を曇らせた彼女に「もう売り切れてて」と慌てながら伝えると「そっかあ」と少しだけ表情が戻った。

「折角運命だねって話したのにね」
「それは苗字さんだけ…」
「もー、研磨君」

へへって笑う彼女が可愛い。追いかけて来てくれたのが凄く嬉しい。きっと言葉にしないと何も伝わらない。

「研磨君、黒尾先輩に私がどうとか言われても、気にしないでね。あれ楽しんでるだけだから」
「え…」
「何か言われたんでしょ?」

少し照れながら言う彼女に俺は吃驚した。もしかして今さっきその話をしていたのだろうか。

「…俺、そういうの気にしない」
「…うん、そっか」
「…苗字さん」
「何?」

きっとここ!っていうタイミングはもう現れないと思う。それだったら、言える時に言ったほうが絶対いいとおもうんだ。だから、俺は。

「好きです」

運命はきっと自分で切り開くものだと思う。俺が苗字さんの運命の相手になれたらな、って思うよ。
真っ赤な顔を俺に見せてくる苗字さんが次に言う言葉は、俺にとっていい言葉でありますように。

20151014

さくら様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
研磨ががんばるのがみたいということで…!基本無気力な研磨ってどうしたら頑張るんだろう…っと悩みながら書きました。そんなに頑張ってなくね…?というつっこみは置いといてください。(笑)
それでは、これからもANKをよろしくおねがいします。



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