10,000hit企画book | ナノ


「黒尾先輩、こんにちは」
「…は?」

私が沈んだ顔でそういうと、てっちゃんはいかにも不機嫌です、という顔を私に見せた。

「何で急にそんなよそよそしい…」
「…お前調子に乗ってるーって」
「そんなの、お前気にしないだろ」
「私だって気にします…」

私が素直にそう告げると、あっけらかんとしたてっちゃん。お姉さま方結構怖いんだぞ、呼び出しって結構心にくるんだから…。

「誰だよ」
「え?」
「言って来た奴」
「え、わかんないし、え?てっちゃん何する気」
「色々」
「いいよ私のために体張らなくても」
「俺がいやだ」
「そう言ってくれるだけで充分」

今だって、たまたま会えたからよかったけど。三年の階にもあがってくるなと言われた。だからあがらないし、でもてっちゃんがこっち来るのもなんだか注目浴びるしきっと恥ずかしいだろうから。2歳差っていう壁が私たちに立ちふさがる。ああ、何で同い年じゃなかったんだろーって漠然と思う。

「まじかよー、じゃあお前が来るまでのソワソワしてる時間なくなるのか」
「ソワソワしてるの?え、ソワソワしてるの?」
「まだかよーってそこにいる男子殴ってる」
「え、嘘!?暴力はやめて!」
「まあ嘘だけどな」
「良かった…」
「まあ殴ってるのは本当」
「ええ!?」
「嘘」
「どっち!」

てっちゃんはケタケタと笑いながら私の頭を撫でる。てっちゃんって手大きいよなあ、あのお姉さま方のなかにてっちゃんのこと好きな人いたのかな。いないとそんなこと言わないか。ああ、ごめんなさい。でも、こればっかりは譲れない。私、ずっと好きだったもん。

「じゃー俺が会いに行ってやるよ」
「い、いいよ…てっちゃん恥ずかしいでしょ」
「ついでに後輩見に行くから。リエーフとか犬岡とか」
「あ、犬岡君同じクラスなんだよね」
「ああ、じゃあ行きやすいじゃねーか」

それにその階たまに移動で行くしな、っててっちゃんは呟く。てっちゃんが、てっちゃんが私のために会いにきてくれるの…?どうしよう凄い嬉しい。前までは一方的に私が会いに行って、うざがられていたのに。今では…!どうしようすごい感動してる。大好きてっちゃん!ぎゅっと抱きしめると、「おいおい」って呆れたような声。

「抱きつく癖なおんねーなー」
「いや?」
「んーん」
「じゃあいいじゃん!」
「俺以外にやったらゆるさねーから」
「うん、研磨は随分前にやめたから」
「おいちょっとまて、研磨にもしてたのか」
「小学校4年生ぐらいまで!」
「何か微妙だな…」

研磨がやめて、と凄く真面目に言われたのでやめたんだった。あのときの研磨の顔…!そりゃ怖いですよ。てっちゃんはお兄ちゃんに抱きつく感じで抱きついてた。まあお兄ちゃんいないんだけどね。大きかったし、抱き心地すっごいよかったんだっけなあ。

「ていうかお前、黒尾先輩って一回呼んで終わったな」
「あっ…!く、黒尾」
「もういいから」
「でも…」
「だから気にすんなって。そんなんでへこたれるようなヤワな女じゃねーだろ?」
「てっちゃんは私を買いかぶりすぎです…」

てっちゃんに会えるんだったら別に敬語でも、黒尾先輩って呼んでも、ぜんぜんいいよ。てっちゃんは嫌みたいだけど、でも私はそれでもてっちゃんとこういうことしたりいっぱい話せるなら、何でも。ああ、こういうの重いって言うんだろうな。私の愛、重すぎ?てっちゃんをじーっと見つめると、優しい眼差しで「名前」と呼んだ。

「なあに?」
「お前、太った?」
「………」

無言で腹を殴ると「イテェッ」って本当に痛そうにした。ふん、バレー部で鍛えてるんだろうけど、私だってバスケ部だったし。何か知らないけど筋トレばっかりしてて私も結構筋肉あるんだからね。ふんって鼻を鳴らすと、ははっててっちゃんは笑った。

「てっちゃん、やられて喜んでるの…?」
「んなわけねーだろバカ」
「いひゃい」
「んー、よし、そろそろ戻るか」
「えー」

頬をつねられながら会話を続けるので私も困る。だって、今凄く不細工な顔してるだろうし。てっちゃんはぱっと手を離して、ふう、と一息ついたらてっちゃんの顔が近づいてくる。え、と咄嗟に目を瞑ると唇に柔らかいモノが当たった。

「ま、とりあえずこれで我慢して」
「………」
「帰りましょうか、名前サン?」

ニヤりと笑って手を差し出すてっちゃんに、私は歯を食いしばりながら手を強引に掴んだ。そういうところ、本当意地悪!嬉しかったけど!
とりあえずお姉さま方には勝てそうな気、してきた。


20151101

マナフィ様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
助けてカミサマ!の番外編をリクエストしてくださって、私本当に嬉しかったです!勢いで始めた小説が、まさか続きを読みたいだなんて…!きっと黒尾とヒロインはいつまでもこんな感じなんだと思います。イチャつくけど冗談も言い合う、みたいな。
お気に召していただければ幸いです。
それでは、これからもANKをよろしくおねがいします。


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