10,000hit企画book | ナノ


「38.4…」

うー、と唸りながら体温計を見る。はあ、とため息をつきながらごろりと寝返りをうった。かれこれ2日たつが熱は全然治らない。しんどいのが2日も続いてそろそろ死にそうだ。学校行ってノート写させてもらって、体育で確かテストあったかれそれ受けなきゃだし、はあ本当にめんどくさい。

「…2日あってない」

たったの2日、されど2日。だけど会えなくてさみしいとはこのことで。いつも学校で会っていた彼ともう2日も顔を合わせていない。今家には誰もいないのもあって寂しさが増した。何か食べようとのそりと起き上がる。う、まだしんどいな…。
ピンポーン、とインターホンが鳴り、ゆっくりと階段を下り、ドアを開けた。新聞の勧誘だったらすぐさま閉めよう…。

「…こんにちは」

真顔で淡々とその言葉を言ったのは、赤葦京治、我が高校のバレー部副主将だ。そして、私が会いたいと恋い焦がれていた相手。突然のことでどくりどくりと胸打って倒れそうになった。だって、来てくれるなんて思わないじゃない。

「…大丈夫ですか?とりあえず中入っていいですか?」
「うん、うん、どうぞ…」

フラつく私を見かねた赤葦は靴を脱ぐなり私を抱き上げた。ふわ、と浮く感触に少し気持ち悪くなったが、動かなくて楽なことには変わりはなかった。「部屋行きますよ」と、歩き出す赤葦。付き合ってから何度もこの家に来てるから場所を覚えたみたいで。

「…部活は…?」
「今日は休みになりました」

ふうん、どうせ体育館の整備か、体育館を開けてくれる人が出張か、そんなところだろう。

「熱は?」
「…38.4」
「まだ高いですね」

部屋を開けっ放しにしていたおかげですんなりと入ることができた。ゆっくりと布団の中に入れてもらったけど、離れたのが何だかさ寂しく感じてきゅっと袖を掴んだ。

「…どうかしました?」
「んーん、なんもない」

ただ側にいるのを感じたかった。そしてあわよくばもっとくっつきたいだなんて考えてて。でも私はそういうことを普段言えるような人ではない。今だってかなり勇気がいることだった。

「どうせ親いないんだろうなって思って、今日は看病しに来ました。お粥も台所使っていいなら作るんで色々言ってください」
「…お粥はいいや…。ううん、他にすることなんてあんまりないし…。あ、じゃあ冷えピタ替えてくれない?」

それぐらい自分でできるだろ、と心の中でツッコミを入れたが、赤葦は「わかりました」と言ってくれた。「ここに箱ある…」と指差した。冷えピタを剥がして、前髪を横に分けて待っていたら、冷たいものが私のおでこに貼られて。ああ、冷たくて気持ちいいなあ。チラりと赤葦を見ればゴミを捨てていた。

「あとはありますか?」
「そうだなあ…今は何も無いかな。じゃあ私の話し相手になって」

ごろりと寝返り赤葦のほうを向くと、びっくりしたように私を見て、少し微笑んだ。まあそうだよね、いつも冷めた感じなんだから。

「名前さん相当弱ってますね」

頬にかかった髪をさらりと撫ぜた。何だろ、くすぐったい。

「…赤葦来たからほっとしたのかな」

布団から手を出し、赤葦の手を探す。赤葦はそれに気づいてくすりと笑い手を握った。

「可愛いですね」
「…うるさい」

きゅっと握る手を強めると、また嬉しそうに微笑んで。赤葦の手は冷たくて気持ちいい。このままずっと握っていたいな。もっと、もっと触れていたい、もっとくっつきたい。

「…キスしたい」
「え?」
「ぎゅってしてほしい」

わがまま、というのを言って見た。風邪引いたからぼーっとしていて、という設定だ。これなら何を言っても許される気がする。だから今のうちに言っておかないと。

「もっと話したい、木兎ばっか構ってないで私にも構ってほしい」

いつも、いつも私を後回しにするの、ほんとにやだ。
そりゃあバレーは優先してほしいけど、でも私の中のわがままな心が、もっと私と一緒にいてほしいって願ってるから。

「……わがまま言いました」

ごめんなさい、と私はとろんとした瞳で赤葦を見た。赤葦はめったに表情とか変わんないし、何考えてんのか分からない時たくさんある。今だってよくわかんないもん。大丈夫ら風邪マジックで全然覚えてないって言えばいいからきっと許されるもん。

「…もっと言ってもいいですよ」

ちゅ、と私の頬にキスを落とした。え、と赤葦を見ると嬉しそうに微笑んでいて、繋いでいた手にも口付けた。

「俺、もっと名前さんにわがまま言われたいです」

そう言って頭を撫でてくるから、たまったもんじゃない。全く、嬉しくてたまらない。「くち、がいい」とトントンと自分の唇に触れると、「風邪うつっちゃうかもなんで」とかわりに唇のぎりぎり横にキスをされた。そ、それってぎりぎりアウトでしょ…?赤葦はぺろりと唇を舐め、「口は風邪がちゃんと治ってから」と耳元で囁いた。ぞわわと体が震え、手を離そうとしたら一層強く握り返さへた。

「これっきりになんてしませんよ。名前さんのわがまま、また聞きたい」

にこりと笑った赤葦に、もうだめだと私は手を握り返した。

20151009

彪様、この度は10,000hit企画に参加してくださり、本当にありがとうございました!
そして一つ謝らなければいけないことが…!看病するというリクエストが来ていたのに冷えピタ貼って終わりという…そして激甘でもない。自分の課題を見つけました。もっとがんばります(笑)
そして赤葦リクエストありがとうございます!やっぱり赤葦といえば敬語ですよね。私も赤葦大好きです。
それでは、これからもANKをよろしくお願いします。

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