朝、私は前髪が伸びたことに気づき、少しきろうとハサミをもって、切り始めた――

「おはよー千帆…ってどうしたのその前髪!?」
「かわい〜千帆〜」
「うっ…せんぱあい!」

眉毛が見える位置に髪の毛があるって、なんか嫌だ…。朝きりすぎたことを後悔しながらマネージャーの先輩に抱きついた。早く伸びないかなあと思いながら仕事を始める。部室の掃除をしなきゃな〜なんて思いながらとぼとぼと歩いていった。
朝練が終わり、みんな帰って行く中、私は最後に出てそーっと体育館を出たら、「挙動不審」って後ろから声がしてビクッと肩を振るわせた。

「あ、かあし…!」
「……前髪」

その一言。私は撃沈。急いで前髪を隠して後ずさりをする。赤葦はじーっと私を見る。いつもの無表情で。く、くそう。くるりと体を正面に直して歩き出す。

「女子ってなんで前髪気にすんの?」
「だって…恥ずかしいし」
「全然いいと思う」
「え…ほんと」
「ばかっぽくて」
「はあ!?」

ちょっとどきっとしたと思ったらばかっぽい!?何それ!私は赤葦を睨みつけた。ぷっと赤葦は笑って、

「そういうところとかさ、ばかっぽい」
「な…!」

腹を抱えて笑う赤葦に、私は怒ろうとしたけどやめた。赤葦、めったに笑わないのに、笑ってる。…なんかちょっとかわいい。むかつくけど。

「いつまで笑ってんのよ!」
「ごめん、でもさ」
「何よ、まだあんの!」
「ふつーに似合ってます」

ぽん、と私の頭を優しく叩いて先に歩き出す赤葦を、私は顔を赤くしながら見つめた。

「ば、ばあか!」

そんなこと言われたら調子乗っちゃうんだからね。ばか赤葦。あと、私以外に笑いかけたりしないでよ。なんか赤葦の笑った顔かわいいし。どきどきと心臓はうるさくて、私はゆっくりと教室に戻った。

「ぎゃはははは千帆前髪どしたの!?」
「笑うなあ!」

友達にはめちゃくちゃ笑われたけど、赤葦が似合ってるって言ってくれたから許してあげる。

20150831


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