「先輩方何してるんですか」
「んー?何かエロ本がそこにおいてあったんだよ」
「なわけないじゃないですか!」

更衣室の掃除がてら男子更衣室を通ったらドアがあいていて、雑誌を持っていた先輩方。表紙は目にモザイクがかかった裸の女性…。もしやって思ったけど、やっぱりエロ本だったか。

「処分します。貸して下さい」
「はあ!?嫌だし!」
「それがあったら練習にならないですよ」

貸してください、と手を出すけど、この人たちは2年生。怖いよ〜。実際こういうのって見逃したらいいのか分かんない。ていうかこの状況どうにかしてほしい。だけど先輩たちは貸してくれるはずもなく、「嫌だいやだー」とごねている。どうにかしないと…。

「じゃあそこに置いて練習に行ってください」
「はあ!?行ったらこれ捨てるだろ!?」
「分からないですよ」
「わかるわ!」

もう強情だなあ。そういう年頃なのはわかるけどさあ、そこまでしなくても…。チラりと見るとところどころ破れており誰かが捨てたのを拾ってきたようだった。全くこの学校は…。

「なあ、何かこの女佐倉にそっくりじゃね?」
「はあ?…うわホントだ!似てる!」
「げーっまじかよ!」

そのげーってなんだよ。げーって。ていうかエロ本に私と似ている人がいるって複雑…。ゲヘゲヘと気持ち悪い笑みを浮かべながら先輩は私と雑誌を交互に見た。もう、これ一種のセクハラなんじゃ…。バッと突然雑誌をこちらに向けてきた。

「ほら、見ろよ!」

見せてきたのは裸でウインクをしている20代の女性。うわあ、生々しい以前の問題でしょ。こんなんみて笑ってるとかまあ別にいいけどあんまり見たいもんじゃないな…。ていうかこれホントにセクハラでしょ。

「もう本当にやめてください。この本が部にあるって先生とかに知られたら大事ですよ」
「もちろん隠すつもりだぜ〜。まあ、佐倉が他の奴に言わなければな…?」

スッと伸びてきた手。私の手首を掴んでゆっくりと擦る。全身がゾワッとトリハダがたって、すっごい気持ち悪い。いつのまにか取り囲まれていて、四面楚歌。結構ヤバイ状況じゃん…。待って、本当にどうしよう、誰か、誰か来て…!

「佐倉ほっせえなあ。ますますこの娘にそっくり…」

なんか私を見る目がすっごい気持ち悪いんですけど!?違う意味で心臓バクバクしてるわ。いつの間にか私のジャージのチャックを下に下げ、さらに手が伸び―――

「何してるんですか」

ゲッと先輩方はパッと手を離した。後ろを振り向くと、赤葦が立っていて。なんというか、物凄くほっとした。赤葦は雑誌を見るなりはあとため息をついて、貸してください。と手を差し出した。赤葦は先輩だというのに物凄い形相で睨みつけ、先輩たちは恐れながら雑誌を差し出した。それを見て私もホッとした。

「あと、今度佐倉に猥褻な行為をしたら先輩に言います。あ、今度じゃなくて今言います」
「えっちょ、それは…」
「なら土下座して謝ってください」

1年なのに凄いなあ…。確かに3年の先輩は怖いもんね。先輩たちは私を一瞥して、本当に土下座をして謝ってきた。私は焦って大丈夫ですから顔をあげてください!と言った。先輩たちはそのあと普通に練習に行ったけど、赤葦もその雑誌を処分しにいって、私はそこにへたりこんだ。

「今さっきのはやばかった…」

本当にそう思う。赤葦が来てくれて助かった。本当に、本当に…。

「佐倉?」

戻ってきた赤葦を見て、私は凄くホッとして、涙腺が緩んだ。ゆっくりと落ちていく雫を暫くみつめ、手で顔をぬぐった。

「…ああいう時は叫んでよ。俺いなかったらやばかったでしょ」
「…うん…でも…赤葦が来てくれたから…」

どこかで赤葦に助けを求めてたんだ。もしかしたら来てくれるかなって。そしたら本当に来てくれて…。なんだかまた涙が零れた。あの時、赤葦が凄くかっこよくみえたんだ。

その後先輩はまた私に謝りに着た。今後一切そう言うことのないよう約束したので、もう大丈夫だろう。あと、私も一人でノコノコ男子更衣室に行ったのにも原因があるから、改善しようと思った。

201500831


prev  next

戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -