「お前ら付き合ってたの!?」
「知らなかったんですか」

淡々と言い放つ赤葦に木兎はビクッと肩を揺らした。「だ、だってよお!」とまだ言うか。私はそれを横目にスクイズの中身を足した。先輩マネージャーが肘でちょいちょいつついてくる、やめてくださいというとニヤニヤされた。

「そーか!お前ら付き合ってたのかー!!」
「もう先輩、うるさいですよ〜」
「おお当事者!ちょっとここ来て並べよ!」
「調子乗らないでください」

睨みつけるとビクウッと体を震わせて「ゴメンナサイッ」と謝ってきたのでニコッと笑っておく。にしても、この人の声は響く。これでもう私たちが付き合ってること、部員全員にバレたじゃないか、はあ。
私たちは2年生になった。赤葦は副主将になって、木兎先輩は主将に。そしてなんと悲しいことに私たちはクラスが離れてしまったのだ。何て悲しいんだろう…。く、涙なしには眠れない。実際クラスが離れたと知って本気で落ち込んだから。

「お疲れ様でしたー」

部活が終わり、赤葦を待つ。やってきた赤葦は木兎先輩と一緒に来ていた。もう、仲いいな。はあとため息をついて歩いていった。

「ちょっと木兎さん、押さないでください」
「いいじゃねーかいいじゃねーか」
「もう、そんなんだから教えたくなかったんですよ」
「んだとこの野郎!俺は応援してんだぞお前らを!」
「木兎先輩、声のトーン少し下げて…」

全く、この人は。この人が彼女で来たら盛大に茶化してやろう。そう決めた私であった、と…。

「こっからは京治独占させてくださいね?」

木兎先輩から奪うように京治の腕を引っ張った。「お、熱いな〜!」と言っているけどもう知らない。「お疲れ様ですー」と言って歩き出す。腕に巻きついていた手を解き、手を繋いだ。京治がため息をつく。

「木兎さん、うるさかった…」
「更衣室でも騒いでたよね、聞こえた」
「暫くこうだろうな」
「まあ、いいじゃん?」

ニヒッと笑って少しだけ大またで歩く。ね、京治。私は今の時間がすっごい幸せで、すっごい楽しいんだよ。わかるかな。

「なんだよ」
「えへへー」

京治のほうをじーっと見てたら少しだけ睨まれた。可愛いなー京治は。
こうやって楽しく笑えるのも、京治がそこにいるからだよ。全部言ってあげたいけど、きっと照れちゃって照れ隠しで頭叩かれるだろうからやめとく。京治、ねえ京治。幸せだね、なんて毎日言ってあげたい。歯が浮くようなセリフだって変わりにいってあげる。外見ばかり取り繕っていた私は内面も可愛くなれるように頑張った。笑顔は絶やさない、なるべく怒らない。京治と付き合ってからさらに笑うようになった気がする。何かが取れた気がして丸くなったような感じもする。

「千帆さ」
「ん?」
「…俺と一緒にいるの楽しい?」
「うん。だって好きだから!」

聞かなくても分かってることなのに、たまに聞いてくる京治。不安なのかなー。不安を取り除いてあげたら楽なのにね。手を握る力が、少しだけ強くなった。


20150902


prev  next

戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -