あれから、私は幾度となくいろんな髪型を試しだけどもういってくれなかった。何と無く私も気まずくて、部活中もクラスでも喋らなかった。
今日も喋らないのかな、なんて漠然と思っていたら。
「マネージャー!スクイズ空ー!」
「はーい!」
急いで中身を入れて渡す。そしたら赤葦が来て、俺の分も、と。
なんだか無償にどきどきしながら中身を入れて渡す。汗を掻いていたのでうちわで仰いであげたら。
「ありがと」
とだけ。でもそのひとことがじーんと胸に来て、それだけで胸が高鳴った。
「なーんかいい感じじゃなあい?」
「わっ先輩!」
「実は付き合ってたり…?」
「違いますよ!」
そんな、付き合うなんて。まだ告白だってしてないのに。付き合うなんて無理に等しい。赤葦…私のことどう思ってるんだろう。あの時可愛いって言ってくれた時顔が赤かった。照れてたんだよね。他の女子には…言ってないよね。
「まあ付き合っても付き合ってなくてもいいけど、あんまり部活に恋愛もってこないようにね」
はっと目が覚めたみたいだった。そうだ、恋愛ばかりで部活をちゃんとしてないなんて最低だ。私は浮かれまくってて、部活そっちのけだったのかも。頬をぱんと叩いて先輩にわかりました!といって洗濯に行った。持ち込まない。持ち込まない持ち込まない。私はあくまでマネージャーだ。
でも…それでも、気持ちがおさえられなくなったら、その時は告白しよう。きっとしただけで楽になるから。
*
「お疲れさまでーす」
部活が終わり、私も帰る。この後コンビニよって電池かわなきゃ…ついでにお菓子もちょっと買おうかな。
「お疲れ」
私の横を赤葦が通った。赤葦一人だ。誰もいない…。
私は走り出した。勇気を振り絞って、言うんだ。
「い、一緒に帰らない…?」
もし断られても笑って帰る。笑って帰る。そう思っていたんだけど、
「いいよ」
と、言葉は帰ってきて。
なんだか嬉しくて口角がゆるゆると上がっていく。バカだなあ私。このいいよにはきっとなんの意味もないのに。
二人並んで帰る帰り道。前の相合傘した時とはちがって、がちがちに意識している。もし何か言って嫌われたらと思ったら何も言えなかった。
「今日さ」
「うん」
「先輩に俺と付き合ってるの?って聞かれてたよね」
「え、うん。大丈夫、否定しといたから」
なんだかこの言い方、赤葦のこと全然興味ないみたいだ。赤葦は無表情で、そっか、と。
「ごめん」
「え、全然!」
「佐倉好きなやついるのにな」
「…え?」
なんで、それ。
ていうか急に。
あれ、私言ったっけ?
「俺と付き合ってるとか噂されたら嫌だよな」
「ちょ、ちょっとまって。私に好きな人いるって…」
「最近髪型とか色々違うから、好きな人でもできたのかと」
そうだけど、いい線言ってるけど。結構アピってんのにわかってないの?この鈍感男!なんかムカついてきた。
「好きな人ねー。なかなか私の髪型に興味を示してくれないんだよね。赤葦ってどんな髪型が好き?」
「俺?俺に聞いても仕方ないだろ」
「…」
ほら、そーいうとことか。ばかばかばーか。私は道端にあった小さい小石を赤葦の方に蹴った。
「でも、佐倉はどんな髪型でも可愛いと思う」
「…本当?」
もっと、可愛いって言ってほしい。この言葉が例えば言葉単体で本のようになっていたら切り取ってノートにぺたぺたと貼って保管するのになあ。
「まあ、その好きな人とうまく行くといいな」
ねえ、赤葦。
私の好きな人が自分だって気づいてないでしょ。
全く、鈍感。
「………私が好きなのは赤葦だよ」
ちいさく、ぼそりと。でも赤葦はきっと聞こえてるだろう。
「ばかやろ」
はずかしくなって足早に駅に向かう。ねえ赤葦。いま赤葦はどんな顔して聞いてる?私はきっと耳まで真っ赤だろうね。ねえ、赤葦。
「…赤葦の好きな人って誰?」
自分だったらいいのにって、何度も願った。
20150901
今日も喋らないのかな、なんて漠然と思っていたら。
「マネージャー!スクイズ空ー!」
「はーい!」
急いで中身を入れて渡す。そしたら赤葦が来て、俺の分も、と。
なんだか無償にどきどきしながら中身を入れて渡す。汗を掻いていたのでうちわで仰いであげたら。
「ありがと」
とだけ。でもそのひとことがじーんと胸に来て、それだけで胸が高鳴った。
「なーんかいい感じじゃなあい?」
「わっ先輩!」
「実は付き合ってたり…?」
「違いますよ!」
そんな、付き合うなんて。まだ告白だってしてないのに。付き合うなんて無理に等しい。赤葦…私のことどう思ってるんだろう。あの時可愛いって言ってくれた時顔が赤かった。照れてたんだよね。他の女子には…言ってないよね。
「まあ付き合っても付き合ってなくてもいいけど、あんまり部活に恋愛もってこないようにね」
はっと目が覚めたみたいだった。そうだ、恋愛ばかりで部活をちゃんとしてないなんて最低だ。私は浮かれまくってて、部活そっちのけだったのかも。頬をぱんと叩いて先輩にわかりました!といって洗濯に行った。持ち込まない。持ち込まない持ち込まない。私はあくまでマネージャーだ。
でも…それでも、気持ちがおさえられなくなったら、その時は告白しよう。きっとしただけで楽になるから。
*
「お疲れさまでーす」
部活が終わり、私も帰る。この後コンビニよって電池かわなきゃ…ついでにお菓子もちょっと買おうかな。
「お疲れ」
私の横を赤葦が通った。赤葦一人だ。誰もいない…。
私は走り出した。勇気を振り絞って、言うんだ。
「い、一緒に帰らない…?」
もし断られても笑って帰る。笑って帰る。そう思っていたんだけど、
「いいよ」
と、言葉は帰ってきて。
なんだか嬉しくて口角がゆるゆると上がっていく。バカだなあ私。このいいよにはきっとなんの意味もないのに。
二人並んで帰る帰り道。前の相合傘した時とはちがって、がちがちに意識している。もし何か言って嫌われたらと思ったら何も言えなかった。
「今日さ」
「うん」
「先輩に俺と付き合ってるの?って聞かれてたよね」
「え、うん。大丈夫、否定しといたから」
なんだかこの言い方、赤葦のこと全然興味ないみたいだ。赤葦は無表情で、そっか、と。
「ごめん」
「え、全然!」
「佐倉好きなやついるのにな」
「…え?」
なんで、それ。
ていうか急に。
あれ、私言ったっけ?
「俺と付き合ってるとか噂されたら嫌だよな」
「ちょ、ちょっとまって。私に好きな人いるって…」
「最近髪型とか色々違うから、好きな人でもできたのかと」
そうだけど、いい線言ってるけど。結構アピってんのにわかってないの?この鈍感男!なんかムカついてきた。
「好きな人ねー。なかなか私の髪型に興味を示してくれないんだよね。赤葦ってどんな髪型が好き?」
「俺?俺に聞いても仕方ないだろ」
「…」
ほら、そーいうとことか。ばかばかばーか。私は道端にあった小さい小石を赤葦の方に蹴った。
「でも、佐倉はどんな髪型でも可愛いと思う」
「…本当?」
もっと、可愛いって言ってほしい。この言葉が例えば言葉単体で本のようになっていたら切り取ってノートにぺたぺたと貼って保管するのになあ。
「まあ、その好きな人とうまく行くといいな」
ねえ、赤葦。
私の好きな人が自分だって気づいてないでしょ。
全く、鈍感。
「………私が好きなのは赤葦だよ」
ちいさく、ぼそりと。でも赤葦はきっと聞こえてるだろう。
「ばかやろ」
はずかしくなって足早に駅に向かう。ねえ赤葦。いま赤葦はどんな顔して聞いてる?私はきっと耳まで真っ赤だろうね。ねえ、赤葦。
「…赤葦の好きな人って誰?」
自分だったらいいのにって、何度も願った。
20150901
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