分からないって言えばそこで終わりだけど、彼女はそれでは終わらなかった。
分からないと頭を捻った問題も彼女はきづいて教えてくれた問題。この解き方は一生忘れないだろう、なんて彼女に言ったら一体どんな反応をするだろうか。そんな彼女は教え終わって満足したのかふー、と息をついて俺の席から離れた。

「委員長ー!」

誰かが委員長を呼ぶ。そういえば、このクラスの委員長って誰だっけ、と考えてみたが思い出せない。確か女子だった気が…。

「はーい、なんですか?」

隣の彼女が少し声を張り上げた。…は?彼女が委員長だったのか。よく見れば、委員長のような髪型をしている気がする。彼女を呼んだ男子は集会の後配られたプリントの話をしている。俺には全く関係のない話だから黙って空を見上げた。今日も快晴だ。

「研磨くん、終わりました」

ニコッと笑う彼女に、「待ってない」とだけ返事をした。「嘘だー」なんてニコニコ笑う彼女にふ、と呆れた笑みを送ると、彼女は目を見開いて。

「研磨君が笑った…!」
「俺だって笑うよ」

ムッとして、少し不貞腐れたように言うと「ごめんごめん」と俺の肩を叩いた。そうやってすぐスキンシップするとことか、男は勘違いしちゃうんじゃないの。

「冗談だよ。拗ねないで」

研磨君の笑った顔可愛いよ、と俺に追い打ちをかけてきた。男に可愛いなんて似合わない。どうせならかっこいいって言われたかった。

「…可愛いって言われるの、嬉しくない」
「ええっ、ご、ごめん」

気に障ったね、と申し訳なさそうに謝る彼女に胸が痛んだ。そういうことじゃない、君に可愛いと言われるのが嫌なんだ。それに俺は可愛いとかじゃない。可愛いというのなら…。

「可愛いのはそっちじゃん」
「え…そっちって…私のこと?」
「うん」

頷いた途端、彼女はピタリと動きが止まる。どうしたんだろうと顔を覗き込むと、その白い肌はみるみる赤くなっていって、俺から視線をそらした。

「まさかそうくるとは思わなかった…」

熱い、とパタパタと顔を手で仰いだ。…え?なんで?何で顔を赤くしているんだろう。そんなことを俺は言ったのだろうか。

「何で顔が赤いの?」
「…研磨君が私のこと可愛いって言うから」
「怒ったの?」
「違うよ。照れたの」

言わせないでよ、とぼそりと。あれ、いつもの彼女らしくない。いつも笑顔で優しい彼女が目の前にはいないんだ。

「…あんまり女の子に可愛いとか言ったらダメだよ」

きっと、勘違いしちゃうから。
彼女はそういうなり、席から立ち上がってロッカーのほうに歩いて行った。
勘違い、という言葉に俺は不思議な感覚だ。
さっきまで、俺も勘違いのことを考えていたから。
…あんまりも何もこれが初めてなんだけど。


20151009




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