「塩谷さんっ…好きです、付き合ってください」
「あっ…」

告白、というものはあまりされたことがないので一瞬戸惑ってしまった。私はぎゅっとスカートの裾を握り、「ごめんなさい」と頭を下げた。上から、「頭下げないで、分かったから…」と寂しそうな声。ぎゅっと胸が張り裂けそうになる。そうだよね、断られたらそんな感じになっちゃうもんね…。その男子はそのまま去っていったけど、私はそこに立ったまま。はあ、とため息をつき踵を返したら、研磨が立っていた。

「っな、なぜいるの…?」
「気になったから、ついてきた」
「そっかあ…」
「…ふみかモテるね」
「アハハ、ないない…」

帰ろ、と研磨の手をとると、「うん」と呟いて私の手を引っ張った。わ、意外と力強い。んん?もしかして、拗ねてる…?

「けーんまっ」
「何」
「拗ねてる?」
「拗ねてないよ」
「うっそだー」
「ほんと」

嘘、だって研磨拗ねたとき私の顔見てくれないもの。手を引っ張ってみると、「もう、しつこい」って嫌そうな顔を見せた。う、これは失敗だったか…。しつこいと言われたので私はもうそれについて触れるのはやめて、ぴと、と体を腕にくっついた。裏庭だし、誰もいないからできること。びくりと肩を震わせて、猫みたいな目で私を見て「ふみか…?」と聞いてくる研磨が凄く可愛い。

「甘えてみました」
「びっくりした、学校なのにそんなことすると思わなかった」
「嫌だった?」
「……」

何も言わないのは卑怯だ。でも、きっと照れているんだろう、と思う。前向きに考えなきゃ。研磨は嫌だったら嫌だって言ってくるもん。えへへ、と笑うと「急に何笑ってんの」って少し顔が赤い研磨が見えた。好きだなあ。そういえば私、何で研磨が好きになったんだっけ…。

「ちょっと、いつまでくっついてんの」
「どこまでも」
「…無理でしょ」
「もう、じゃあやめるよ」

ぱっと離し、手だけ繋いだ状態になったら、少し物寂しそうな顔。あーもう、そういうところが本当可愛くて、好きなんだから。言わないけど、研磨をずーっとぎゅってしていたい。でもきっと引かれるだろうから言わない。いつものふみかはそんなことしない子だから。小さい頃から病気がちで、興奮するとすぐ倒れそうになるからなるべく喧嘩もせず、穏便に暮らすのを心がけていた。だけど、研磨と出会ってからそんなのどうでもよくなって、結局病気がぶり返して、手術して…。でもこうして研磨の隣にいれて、今はそれが幸せ。

「…俺、ふみかのこと、好きだから」
「?…急にどうしたの?」
「ちょくちょく言っとかないと、ふみかを誰かにとられそうだから…」
「そんな、私は研磨から離れないよ」
「………わかんないじゃん」

不安なんだなあ、研磨が私の手を強く握る。そっか、私は研磨のたまに男みたいなところが好きなんだな。いっつもボソボソ喋ってて、最初は心も開いてくれなくて、どうなることかって思ったけど、こうしてみると嬉しいなあ。だって、付き合えるなんて思わなかったんだから。

「だから、俺が凄くふみかが好きなこと、知ってて」
「…うん」

嬉しいこと、いってくれるから。口元がだらしなく緩んで、えへへ、と笑みが零れた。何で笑うのってちょっと怒った研磨が可愛くて、またぎゅっと腕を抱きしめた。「ちょ、ふみか」って焦る研磨が可愛くて、大好きで仕方なくて、「大好きだよ」と語尾にハートマークがつくぐらい甘ったるく言ってみた。

20151107







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