「…私、人見知りだったんだ」
「え…?」
「だから研磨君を見て、昔の自分を思い出して、何が何でも仲良くなってやろうって…私、声とか小さいし、大きな声出すと興奮して脈拍が早くなったりするから。だから雷とかも昔から苦手だったの」

彼女が、人見知り…?
確かにおっとりとはしているけれど、人見知りな風には見えなかった。あんなにうるさい友達がいるのに。

「ミヨちゃんと友達になって人見知り克服できたんだよ。ごめんね、ミヨちゃんうるさかったでしょ。でもいい子だから、嫌わないであげて」
「…うん」

あの子は、君が大好きみたいだから、俺も嫌いになんてなれないだろう。
…ねえ、なんで君の手は、冷たいままなの?

「研磨君が来てくれてよかった、あのまま終わるんじゃないかってそれだけが心残りで」
「今にも死ぬようなこと言わないでよ」
「いいの、私には十分」
「…また隣の席になるんでしょ?」

じんわり、と冷たい汗が俺の手を這う。少しだけ震えている彼女の手を、上からぎゅっと握りしめた。彼女はびっくりしたのか俺を見つめる。

「俺、ふみかの隣の席になれてよかった」

ますます君の手は震えて、終いには彼女の綺麗な瞳が揺れている。
大丈夫だから、大丈夫だからと手をまた強く握りしめる。

「好きだよ、ふみか」

ばん、とダムが崩壊したみたいに、彼女の目から大粒の涙が零れて。
ああこんなにも、こんなにもするりと出てくるものなんだ。あんなに意地になって、認めたくないと思っていたのに、いざ認めたらこんなにもするりと。ああ、彼女が泣いてしまった。俺は手を離して、彼女の涙を掬う。鼻水をすすりながら、ぼろぼろと涙を流す彼女に、「ひどい顔」と笑った。

「…私、死んじゃうかもしれないんだよ」
「うん」
「もう会えないかもしれないんだよ」
「うん」
「なんでそんなこと急に言うの?」
「わかんない。…困る?」
「…」

彼女は両手で涙を拭って、それでも涙が出てきて、大変そうだ。

「困るよ……嬉しくて、たまらない」

涙でべたべたになった彼女の頬を手で滑らせる。うん、分かるよ、だってふみか、笑ってるじゃないか。

「…手術、50%の確立で成功するんだって」
「え」
「でも50%は失敗…私、それなら手術せずに死のうと思ってた。でも…また、研磨君の隣の席で話したいから…受けてみる、手術」
「うん…」

まだ、彼女にはこれ以上触れられないけれど。彼女と俺のおでこをこつんと合わせた。恥ずかしくて目をそらしてしまったけど、彼女の明るく笑い声が聞こえた。


201151101




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