「…あの」
「なに」
「…ちょっと、いいかな」
「よくない」
「…」
「ミヨ行ってあげなよー」
「…」

がたりとミヨと呼ばれた子は立ち上がる。ぎんっと俺を睨みながら俺の方へと歩く。とりあえず俺は教室から出て、あまり人がいないところへ。

「なに」
「…俺、お見舞い行くから」
「はあ?」
「この前は嫌いって、言って…ごめん」

俺も感情に任せて言ってしまったから。あまり話したこともない人に向かって嫌いなんて、俺にとってはありえないことだから。彼女は目を見開いてびっくりしている。

「まさかそんなことを言いに呼んだの?」
「…うん」
「ばっかじゃないの!」

でた、この人の大きな声。耳を塞ごうとしたけどまだ続くみたいだ。

「そんなんで呼び出してんじゃないわよ!あと別にお見舞い行くこと私に言わなくていいから!」
「…うん」
「行きたきゃ行けばいいじゃない!…でも、また泣かしたらまじで許さないから」

この子は、本当にふみかが好きなんだな。すごく分かる。自分の気持ちにまっすぐで、彼女の前ではあんなに…。そして俺にも怒ってきて、でもそれは全部彼女に対してのことだけで…。
俺も、もっと素直になれたらいいのに。なれないからこんなことになってしまったんだ。ミヨと呼ばれる子は先に帰って行って、俺もとぼとぼと歩いて行くと、担任が隣から歩いてきたのでぺこりと会釈した。

「孤爪、お前塩谷と仲良かったんだな」
「……べつに」
「俺はあの時言ったことを漸く理解した。お前の隣の席にまたなりたかったんだな」
「……え…?」

一体何を言い出したのか、俺にはよく分からない。だって、あの時仲良くないって、まだ全然だって……。

「この前お見舞いに行ったんだけどよ、あいつこう言ったんだ。まだ孤爪と仲良くないから、もうちょっとがんばりたいからまた隣の席にしてくれないか、ってな。まあ治ったらって話だけど」

ぶわり、何かがするすると俺の心の中に入ってくる感じがする。これはきっと、彼女の毒だ。彼女の毒が俺の中に入っていってる。きゅうと締め付けられて、喉元が熱くなる感じがした。

「…先生、俺もお見舞い…行きたいんで…」
「ああ、場所とか部屋番号教えてやるよ!」

早く、早くふみかに会いたい。
急に現れたそれは俺の心を暖かく、明るくさせてくれた。
早く謝らないと、俺はとにかく彼女に会いたくて仕方なくなってしまった。

20151101




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