7月に入り、彼女は学校に来なくなっていた。彼女のことを心配し始めたクラスのみんなはどうしたのか担任に聞いたところ、病気で入院しているらしい。なんの病気かは教えてくれなかった。
結局それで席替えも有耶無耶になって新学期に持ち越しになった。彼女が帰ってきたら席替えをする、らしい。
「おいおい、研磨の彼女病気なのかよ…」
「彼女じゃない。あと何見に来てんの」
「だって美しい!」
「…ふみかは見世物じゃないよ」
何言ってるんだろう、俺は。
虎が彼女を見に来ているとかどうでもいいのに。虎が何を聞いてこようと関係ないのに。なのに彼女を庇って。そういえば俺はあの時から一度も彼女と話していない。まあ、それも別にどうでもいいか。
「なんか元気ねーよな」
「…別に、普通…だよ」
「彼女と喧嘩でもしたのか?」
「彼女じゃない…してない」
あれは喧嘩じゃない。
俺が一方的に彼女を拒絶した。だけど彼女だって俺のこと、なんとも思っていなかったらどっちもどっちなんだ。
「つーか入院してんならお見舞い行けよ」
「え…いやだ」
「はあ?喧嘩してんなら尚更行け。そして仲直りしてこい」
「……喧嘩してない、行かない」
「俺もついてってやる。びょ、病室の前までな!」
「いらないし行かない」
「研磨…!」
今更何を言えと言うんだ。
のこのこ彼女の元へといっても彼女が俺を拒絶するかもしれない。
虎は俺の頭をべしっと叩いた。「痛い」と言いながら頭を摩ると「馬鹿野郎!」と喚かれた。
「なに意地張ってんだ!」
虎のおおきな声が、俺の耳へとぎゅんっと入ってくる。意地、いじ、イジ…。
眉間に皺を寄せがん垂れてくる虎に俺は目を見開いた。
「…意地?」
「そうだ!お前は意地を張っている」
「そんなことない…」
「内容はどうあれなんかあったんだろ?なら話し合えよ!」
俺だったらそうするね、って虎は言う。虎、女の子と喧嘩っぽいことになったことあんの。
俺はその言葉が深く心に入ってきた。…意地張ってる、か。話し合う…うん。
「…やっぱお見舞い行く」
「おお!」
「話してみる」
「おおお!」
「ありがと、虎」
「け、研磨が!研磨が俺に礼を…!」
「うるさい」
そうとなったら、担任に聞かないと。あと、あの子にも謝らないと。
20151031
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