「…何だか顔色が悪いよ」
「そうかな」

彼女の顔は青白くて、何だかビクビクしてしまう。いつ倒れてもおかしくないような顔色で、心配だ。

「研磨君、大丈夫だよ。私そんなにヤワじゃないから」
「でも…」
「もう、やめて」

ピタり、動かそうとした手が止まる。彼女はシャーペンを握り締めたまま寂しそうに笑った。

「心配されるの、嫌いなんだ」

そう言って視線をプリントのほうにうつした。また担任の雑用だろうか。ねえ、何でそんな顔で言ったの。だって今、泣きそうだったじゃないか。心配されるの嫌いって、心配するようなことを君がしているんだから、俺はどうしたって心配してしまうんだ。

「…、いつになったら良くなるの?」
「っ」

彼女の顔が少し歪んだ。ポキ、とシャーペンの芯を折ってしまいまたカチカチと押して書きはじめる。「もうすぐだよ」とだけ言って、俺のほうには顔を向けない。何で、何でなんだ。何で君はこっちを向かない。何で泣きそうな顔なんだ。何か、隠しているんだろう。

「ふみか」
「いやだ」
「ふみか?」
「いやなの」

何が、って言うと彼女は口を尖らせて、持っていたシャーペンを置いてようやくこっちを向いた。泣く手前のような顔を見せて、俺に何を言うつもりなんだ。

「このまま楽しい時間を過ごしたい。だから、何も言いたくない」
「?」
「研磨君を心配させるようなことしたくない、私なら大丈夫だから」

全然大丈夫、じゃないじゃないか。そんなこと言われたら、益々心配になってしまう。彼女は寂しく笑って友達のほうへと歩いて行った。彼女の友達は俺を睨んでいた。


「塩谷さん大丈夫なのか?」
「…大丈夫じゃない」

クロが彼女の心配をするとは思わなかった。びっくりしたけど、嘘はつかない。クロはふーん、と神妙な面持ち。

「支えてやれよ、彼氏クン」
「ちょっと、付き合ってないんだけど」
「付き合う寸前だろ?」
「そんなわけない」

付き合う、とか考えたことなかった。彼女とただ、楽しく話していればそれでよかったから。付き合うなんて彼女も望んでいないだろうし、もちろん俺も。ていうか彼女は、俺のことどう思っているのだろうか。嫌われてはいないだろうけど。

「研磨に彼女かー」
「クロしつこい」
「何ムキになってんだ?おりゃ、おりゃ」
「そのノリ超めんどくさい」

ニヤニヤしながら俺の肩を叩くクロがうざくて仕方ない。というか彼女は大丈夫だろうか。バイト先で、倒れていないだろうか。今日行ってみよう。

「あれ、いない…?」

今日はバイトがあるって聞いたのに。休憩中かな、俺は何も買わずに出た。





戻る



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -