「研磨君って髪の毛染め直さないの?」
「…めんどくさいから」
キラキラと目を輝かせ俺の頭上を見る彼女。聞かれる、聞かれると思っていたがこんなタイミングで聞かれるとは。
「私が金髪にしたらどう思う?」
「………やめといたほうがいい」
「えー、やっぱ駄目かあ」
いつも同じ髪型、だからすぐ彼女と分かってしまう。
「…その髪型以外の髪型しないの」
他の髪型も似合うんじゃないかって、違う髪型の彼女もみてみたいと思うんだ。
「ハーフアップ気にいってるんだ。委員長って感じしない?それに私がポニーテールとかツインテールとか似合わないでしょ」
髪型に名前があったのか。なんとなくポニーテールはわかる。後ろに一つに束ねて上でくくるやつだ。想像してみたら、何だか印象が違う。彼女じゃないみたいだ。でも、いいと思う。
「似合わないことはないと思う」
「ええー、そうかな?」
へへへ、と笑って髪を触る。困ったように笑う彼女はきっと、これ以上触れてほしくないんだと察した。
「…まあ、その髪型でもいいけど…」
確かに委員長といえば委員長という感じはする。俺は気づかなかったが。髪型に何かこだわりがあるんだったら俺がとやかくいうのも野暮というものだし。
「…研磨君はこの髪型、好き…?」
「……普通、かなぁ」
なーんだ、とつまらなさそうな彼女。一体どういう意味で聞いてきたのだろう。
「でもいい加減長くなってきたから切ろうかな」
胸まで伸びたの久々だし、とぽつりと呟いた。彼女の髪が短いところはあまり想像できないが、きっと長い方が似合うんだと思う。少なくとも俺はそう思うんだ。
「……それでいいじゃん」
「え?」
「…………切らなくていいじゃん」
へ。とぽかんと口を空ける彼女に俺は焦って「いや、別に切ってもいいけど」と矛盾したことを言ってしまった。彼女は珍しく笑顔を見せない。
「研磨君は…ロングのほうが好き?」
「……そっちのほうが似合う、と思う」
何だか恥ずかしいことを言ってる気がする。目線を下に向けてまるで机と喋っているみたいだ。
「…そっかあ」
彼女がどういう表情をしているのか怖くて見れなかった。だけど、怒ってはいないなとそれだけは分かったんだ。
20151011
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