彼女の隣の席になってやっと一週間立った。少しだけ話せるようになった気がするし、大分彼女にも慣れてきた。

「ふみかー!ジュース買いに行こ!」
「いいよ」

ガタりと席を立つ彼女。チラりと俺のほうを見て、目があった。

「研磨君もいる?買ってくるよ」
「え、や、いい…」
「ほんとに?」
「う、うん」

そっかー、と残念そうに眉を下がらせ笑顔を見せた。「ふみかー!」とうるさい友達。「はーい」と友達のほうにかけていき、そのまま出て行った。何というか、性格が真反対に見えるのに何であんなに仲が良いのか謎だ。
…それで、何で俺に話しかけるのかも謎、だ。

「研磨ー!」

廊下から手を振って俺を呼んだのは虎だった。何だろうと席を立ってゆっくりと歩く。珍しい、このクラスに来るなんて。

「よっ」
「どうしたの」
「丁度ここ通ったから様子見に来たんだよ!」

何だかんだで俺のことを心配してくれている虎。そういうところ、虎のいいところだと思う。でも、心配しすぎな気がする。あと、声が大きい。

「お前の隣の席ってのは?」
「今友達とジュース買いに行ってる」
「は?お前も行けよ」
「いや、普通に無理でしょ…」

女子二人の中に男子一人って。しかも一人は喋ったことないし。いくら彼女が優しくてもそんなこと無理だ。

「何でだよ!俺だったら行くぞ!」
「……え」

虎、そんなことできるの?いくらなんでも無理でしょ。何でこんな自信満々に言えるのか俺には理解できず、頭にハテナマークが浮かんだ。虎はどうした?って俺の顔を覗き込んできたけどちらりと俺の横を見てぐわっと後ろに仰け反った。え?と俺は後ろを向こうとしたら。

「わっ」
「っ!」

急に冷たいものが頬に当たったのと間近で声を出され声にならずにビクッと肩を震わせた。後ろにはにこりと笑った彼女が俺の頬に冷たいペットボトルのジュースをぴたっとくっつけている。ニヤニヤしながらそれを離して「吃驚してるー」と楽しげだ。

「お邪魔しました」

ニコッと笑って教室に入っていく彼女。その隣で彼女の友達が「孤爪君と仲良いんだねー」と。それに対して彼女の「うん」と微かに聞き取れた声に胸が跳ねた。

「おっおおおいっ今の!」
「ああ…あれが隣の席の人だよ」

冷たい、と言って頬についた水滴を手で拭った。虎はあたふたして何故か顔まで赤くしている。意味が分からない。

「隣の席の子、って…女子かよ…!」
「うん。あれ、男子だと思ってたの」
「女子だと思ってたらジュース一緒に買いに行くとか言わねーよ!」

確かに。何だ、勘違いをしていたのか。虎ならあり得るな。なるほど、それであんなことを…。
彼女の顔がふいに頭の中に浮かぶ。きっと彼女と一緒に行ったら話を続かせようとがんばってくれるだろうな。
そう考えると、少しだけ口元がニヤけた。「何だよ急に」と言う虎に「なんでもない」と素っ気なく返した。

20151010



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