土日の補習。午前で終わり、くああとあくびをしながら教室から出た。これから帰ってバイトの時間まで勉強して…あ、ちょっとバレー部の練習見に行って見ようかな。うん、出しゃばってないよね。ただ純粋に練習が見たいだけ。…昼だから休憩中かな……。ええっと、あそこの体育館…。あ、なんか騒がしいなあ…え、外から?くるりと水道のほうにある方に顔を傾けたら。

「ちょっマッキーこっち向けないでよ!」

及川君の言葉でえ、となっていたら冷たい感触。バシャッと水がかかりあたしの髪からは水滴がぽたぽたと落ちる。…またかよ。

「うおわっひかるちゃんだ!岩ちゃんに怒られちゃう!」
「でえ!?なんでそこに!?ごめんな!」
「…とりあえず何か拭くものください」

またこのパターン?あたし二回目なんだけど…。やっぱりでしゃばっちゃったからこれは罰なのかな。うん、そう考えよう。2年か1年か分からない子がタオルを取って着てくれるとのことで、とりあえずそこに立ったままだけど、ここの空気やばい。部員数名、3年が二人と…なぜか岩泉いないし。花巻君はプクククって笑ってるし。

「何で笑ってんのよ!」
「いや…岩泉見に来たのか?」
「っそ、そうよ!何か文句あんの!?」
「いや無いけど…そこにいるとは…思わねーだろ…」
「あたしだってホース持ってるとは思わないわよ!」

しかも当たるとは思わないし!今日もしっかりアイロンで髪を綺麗にしてきたのに、アイロンとれちゃってるし…あたし癖毛なのに。まあ帰ってまた綺麗にするからいいけど、いいけどさあ…。こんな顔岩泉に見せらんない。しかも岩泉に会いに着ても何しに来た?って言われるじゃん。理由なんていえるわけないし…。

「あたしやっぱりそのまま帰ろうかな…」
「このまま?風邪引いちゃうかもだよ〜?」
「岩泉今服替えにいったからそろそろ帰ってくんぞ」
「ま、ますます帰りたくなってきた…」
「水も滴るいい女とかいうだろ」
「言わないし…」

はあ…。とかため息をつきながら前を見ると誰かがこっち来てる。あっやばいこの状況また見られるのか…。とりあえず俯いとこうかな……あれ?何か急に走り出した?おお、すごい足早い…。しかも体格超いい!岩泉以外にもそんな体格…ん…?…あれ岩泉だ。

「何してんだお前ら!」
「いでぇっ」

そこになぜか転がっていたバレーボールを及川君に当てた。「俺だけ!?」と及川君は喚いている。「水かけたのはマッキーだよ!」と涙目ながらに言うと「はぁん?」と及川君を威嚇していた。花巻君のほうをチラりと見たので、「あんまり怒らないであげて…」と言って、なんとなく恥ずかしいから花巻君の後ろに隠れた。花巻君はにやりと笑って「あれれ〜?隠れてていいの〜?」なんていうから睨んでやった。

「望月!」
「…はい」

花巻君の後ろから顔だけ出すと凄い不機嫌な顔が見えた。そんな怒らなくてもいいじゃん…。確かにあたしが勝手に来たからいけないんだけどさ。そうすると後ろから「あの、これ」って下級生らしき子からタオルを頂いたのでお礼を言って受け取る。

「…とりあえずこっち来い」

あたしの腕を強引に引っ張っるからコケそうになりながらも花巻君の後ろから離れた。後ろでヒューヒューと一同騒ぎ始めているが岩泉はオール無視。あたしも歩幅が大きい岩泉に合わせるのが大変でそれどころじゃなかった。体育館の裏側っぽいところについて岩泉は足を止める。うわあ、これからあたし怒られるんだな…。

「ちゃんと拭いとけよ」
「あっ、うん」

岩泉はあたしからタオルをとって髪を優しく拭いてくれた。顔に大体かかったから髪はそこまでぬれてないんだけど、まあ言わなくていいよね。ていうか、岩泉が近い。何だかドキドキしてきた。

「…なんであそこにいたんだ」
「…騒いでいるのが聞こえたから」
「んで、こうなったと」
「…はい」

嘘はついてない。元々岩泉を見に来ただけだけど。それで今こうして岩泉と話ができているから、結果オーライってやつ。あたしはもういいよ、と言って髪を拭くのをやめさせた。

「ったく、あいつらは…」
「あ、あんまり怒らないであげてよね!あたしが悪いんだし」

あたしのせいでみんなが怒られるのは凄い胸が痛い。怒られるなら、あたしだけでいいし。そう考えていたら、岩泉は不機嫌そうな顔を見せた。

「…んだよ」
「え?」
「…さっきから、花巻の肩ばっか持ちやがって…」

…え。
岩泉はムスッと口を尖らせながら頭を掻いた。それってまさか、それってまさか、ヤキモチというやつ…?へえええ!どうしよう、どうしよう嬉しくてニヤけそう。いやいやだめよひかる。ここを堪えてこそあたしなんだから!

「別に、そういうわけじゃないし」
「花巻の後ろに隠れるしよ」
「…それは」

そこにいただけで、岩泉と目を合わせるのが気まずかっただけなんだけどなでもそれはいえるはずもなく。言葉がでてこなくてお互い無言になる。…ここはあたしが折れるべき、か。

「…岩泉と目を合わせるのが気まずくて、ちょっと隠れちゃいました」
「…別に花巻じゃなくてもいいだろ」
「えっだって他にいない…」
「そもそも隠れなくていいじゃねーかよ」
「まあ確かにそうだけど…」

岩泉の口調が段々と荒々しくなる。あ、あたし怒られてる…。真面目に。確かにあたしが軽率な態度とったから、岩泉も怒るよね。チラりと岩泉を見ると、あたしと目が合って何か気づいたのかハッとなった。

「ワリぃ、俺心せめーな」
「…へ?」
「男らしくねぇ。男なら心は広くもたねーと、だよな」

今度は岩泉がへこんでしまった…。嘘、どうしよう、岩泉悪くないのに!そう思って当然なのに!

「岩泉は悪くないよ!その、あたしが軽率な行動をしてしまったから…だから悪くない、し、気をつけるから!」

あたしだって、ないと思うけどあたしと同じことしたら間違いなくイライラするし。そう考えるとあたし結構無神経なことをしてしまったんだなあ。岩泉は「おう」とだけ言ってあたしの頬を撫ぜた。

「何か、ダメだな俺」
「ううん、あたしだって」

岩泉にしては珍しい頼りなさそうな笑みをみせられ、なぜかキュンとなってしまった。言ってしまおうか、本当は岩泉の練習している姿が見たくて、岩泉に会いたくて来たことを。そしたら岩泉は、どんな反応をするだろうか。

「本当はね、岩泉に……い、岩泉、それシャツ反対だよ」
「えっ、うお、まじだ!」

汗掻きまくって一回脱いで違う練習着を着てきたらしい。しかもみんなが騒いでいるから気になって急いで着替えたから、とのこと。…え?何か岩泉脱ごうとしてる?えっちょ、ちょっと待ってよ!い、岩泉の腹筋がチラチラ見える…!見てもいいの!?見てもいいのかな!?キャアア!素晴らしい体格!もうあたし鼻血出そう…。腹筋、腹筋素晴らしい…二の腕、二の腕の筋肉!やばすぎでしょもう待って倒れそう…。

「お前見すぎだろ」
「はっ」

しまったガン見しすぎた。岩泉は練習着をちゃんと着なおして、ふーとため息をついた。ああ、もう終わりかあ…もうちょっと見たかったなあ…。

「…なんだよ」
「べっつに」

あーあ、言えなかったな。岩泉に会いに来たってこと。でも、かわりに良いものみれたから別に良いや。ニヒッて笑って見せるとぐにって頬をつねられたので「痛い」と言ったら笑われた。

20151028




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