あたしって結構わがままなのかな。
凄い、岩泉をぎゅってしたい。手繋ぎたい。…キスしたい。
あ、わがままとかじゃない…単に欲求不満なだけだ!駄目よあたし!フラストレーションたまりまくりなんて…!あたしも部活入っとけばよかった。そしたらリフレッシュもできるだろうし岩泉と帰れる。あー、人生の選択を間違えたな…。もう一度やり直すならマネージャーになろう。そんで岩泉にタオルとか渡して「サンキュー」って爽やかな笑顔をあたしに……キャー!!!

「…何してんだ」
「足の体操よ」

じたばたと足を動かしていたら岩泉に怪訝な表情で見られた。もう動揺しない。いっつもベストなタイミングで席につくからもうなれた。あたしのこの行動は毎回見られるけど。

「お前ってよくニヤついてるよな」
「表情筋が緩いのよ」
「いますっげえ真顔だけど」

だって岩泉と話す時緊張しちゃうんだもん。素直になれないあたしも悪いけどさ。でもあたしだって言い分はある。岩泉がかっこよすぎてニヤけないように必死なの。気緩んだら今すぐにでもニヤけれる自信ある。

「…お前って部活入ってないんだっけ」
「ん?まあね。三年間帰宅部よ」
「…中学何部だったんだ?」
「テニス」
「へー、だから足に筋肉ついてんのか」
「えっ…い、いつ見た…!」
「お前がじたばたしてる時」

ひいい!あたしのいらない筋肉をみられた!たまに楽しくてテニスとかしてたから筋肉そのまんまだし!ということも二の腕の筋肉を見られるのも時間の問題…!だらだらと背中から汗が流れる。

「いっ岩泉には負けるから…」
「そりゃ女には勝つだろ」
「二の腕とかヤバそう…」
「ははっどうかな」

袖をまくってぐっと拳を顔のほうに向けて力こぶをみせた岩泉に、「おおっ」と声が漏れた。だ、だって力こぶ、凄い…!待って待って!何これ超凄い!かっこいい!岩泉…好き…大好き…。

「変な目で見てくんなよ」
「っそ、そんな風に見てないわよ!」

慌てて平常心を取り戻す。腕を元の位置に戻した岩泉に少しだけ残念と思ってしまう。もっとみたかった…多分足も凄いんだろうな…。もうキュンキュンして仕方ない。そういえばあんまり気に留めてなかったけど球技大会も凄かったんだよな…確か一個下の男の子の剛速球打ったんだっけ…あたしは丁度それを見てかっこいいなあって思ったんだよね。そのときは同じクラスの岩泉君、としか思ってなかったけど…。

「ふふふ、ふふふ…」
「何急に笑ってんだ?」
「岩泉かっこいいなーって……あっ」

ぽろりと言ってしまった。あたしが常日頃思っていることを…。ま、待って今のノリで言うか!?おかしいよね!?どうしたこいつ頭でも沸いてんじゃないかって思われるかな!?ま、待ってどうしよう恥ずかしすぎて顔が熱くなってきた。いやそれどころじゃなくて…。

「な、なーんて言ってみたり…アハ、ハハハ…」

チラりと岩泉を覗くと、カチンと固まってて。岩泉の前で手を左右に振ってみても反応なし。もしかして、もしかしてあたしが滅多に言わないこと言ったから嫌過ぎてこんなことに…!

「今さっきの無し!無しだから!忘れて!」

顔の前で手を振りながらそう言った瞬間、岩泉はピクりと体を動かしてあたしの腕を掴んで「はぁ…?」と凄んで見せた。えっ、と吃驚して体が動かなくて、何で睨んでるのか考えたけどあたしが言った言葉を撤回してるからだよね…?一度言ったことは取り消すなってこと!?お、男らしいよ岩泉…。

「何で無しにすんだよ」
「だ、だって嫌だったんでしょ…?」
「………照れてたんだよ」
「えっ」

分かりにくい…。すっごい分かりにくい…。待って、この前見たときはすっごい可愛かったのに…。岩泉の顔は急に赤くなって、そのままあたしの腕を離した。あ、離れてしまうんだとあたしは一人名残惜しくなった。でも、これが本来の照れた時の顔だって…。とりあえず心の中でシャッターを切りながら改めて考える。あたし結構なこと言っちゃったな…。か、かっこいいとか…。恥ずかしくて、この場から立ち去りたい気分だ。馴れてないことは言うもんじゃない。

「あっ、つ、次の授業始まるよっほら…」
「…望月」
「なっなに…?」
「お前も充分、可愛い」

そう言うなり、ぷいっと前を向いた岩泉。耳まで真っ赤なのを分かりやすく主張された気分だ。あたしはと言うと、顔が赤くなって口元がだらしなく緩むのを抑え切れなくて。とにかくもう死んでもいいやってぐらいの勢いだ。両手で顔を覆うけど、岩泉が言った言葉がこだまように何回も、何回も頭の中で流れて。

「…はぁ〜…」

駄目だ、岩泉がかっこよすぎて、嬉しすぎる。可愛い、とかこんなに破壊力あったっけ?今日一日すっごい幸せに過ごせような気がする。とりあえずあたしはこれだけで、幸せ。

20151016







戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -