あたしって何でこう、素直になれないんだろう。何で強がって、岩泉に不満を溜まらせるようなことばかりするんだろう。感情的になって、自分を全部理解してほしいと思った。何でわかってくれないの、って思った。それってすっごいワガママなことだよね。岩泉は今まで我慢してたのかな。知らないことばかり、って。

「…あたしって相当バカだよねえ…」

今までのツケってやつだろうか。ごまかしごまかし生きてきたから、岩泉が怒っちゃったんだ。しかも花巻君のほうに行っちゃったら、そりゃあ怒るに決まってる。
一日頭を冷やして、月曜日。岩泉が来るのを待って、朝一番に謝ろう。
朝練が終わったのを見かけて、バレー部一同が校舎に入っているのを見つけて、「岩泉」と呼んだ。こんな朝から呼ぶなんて、あたしは何て重い女なんだろう。でもみんな気をきかせてくれたのか、何も言わず校舎の中に入っていった。花巻君と目が合い、「がんばれ」と口パクで応援された。あたしは校舎の端、あんまり人が少ないところまで連れて行った。あんまり人前で話すようなことじゃないから。そして岩泉のほうに振り返る。

「…その、二日前…ごめん」
「…」

岩泉は何も言わず、ただあたしを見ているだけ。違う?この言葉じゃないのかな、聞きたい言葉は。

「い、岩泉に心配かけたくなくて、進路のこととかも言いたくなかった、ただ強がってただけなの」
「…何となく、それは分かってた」
「うん」
「…花巻には相談してたのか?」
「してないよ、誰にも言ってない」

強がって、誰にも言わなかった。それが仇になるとは思わなかったけど。それにしても花巻君の名前がでてくるってことは、やっぱり気にしてたんだ。ごめんね、岩泉。あたしは岩泉だけだから。岩泉が、大好きだから。それをちゃんと言葉にできないあたしはずるいと思う。ちゃんと、ちゃんと仲直りできたら岩泉の目を見て気持ちを言葉に表そう。

「私、花巻君とは何もないよ」

きっと、岩泉が一番聞きたいことってこのことなんじゃないのかな、って思う。きっとまだあるんだろうけど、こんな雰囲気で「実は貴方のことを何時も思って空回りしています」なんていえるわけないし…!

「…俺はお前のこと疑ってるわけじゃねーよ」
「うん」
「…ただ、俺には話さねーのに、花巻には話すのかって思っただけだ」

ああ、岩泉はあの時あたしが進路のことも、岩泉のことも全部話したと思ってたんだ。そりゃそうか、怒るはずだよね。あたし、岩泉になんてことをしてしまったんだろう。

「たまたま花巻君とあっただけ…何も話してないよ」
「嘘つけよ、そのまま二人でどっか消えたんだろ」
「そ、それは…」

あたしが泣いてて、花巻君が気を遣って移動しただけなんだけど。でも泣いてたなんて岩泉に言ったら、重いって思うかな、思っちゃうよね…。でもこれを言わないと、岩泉はきっとまた違うことで考えこむだろうなあ。…よし。

「…な、泣いちゃったから」
「は?」
「あ、あの後泣いたから…花巻君が気を遣って移動してくれたの」
「泣きついたのかよ」
「ちがっそうじゃない…」

そうじゃない、そうじゃないの。どうしたら上手く伝えられるんだろう。でも花巻君を見たらほっとして泣いてしまったのも事実だ。強がってしまったから、岩泉には弱い部分を見せれないと思ってしまった。だからあたしが変わらない限り、この現状はどうにもならないのだ。

「…とにかく、授業はじまっから、帰るぞ」
「…うん」

駄目なのかな、あたし。
こんなことになっても、あたしは岩泉が好きで好きで仕方ないし、この広い背中に抱きつきたいと思ってしまう。ああ、こんなことを考えてるからいけないんだ、きっと。気持ち悪い、こんなことを考えているから気持ちを隠してしまって、隠し事ばかりだと言われるんだ。

「何トボトボ歩いてんだ、遅刻すっぞ」

岩泉が、あたしの手を握った。い、岩泉の手大きい…ごつごつしてて、男って感じ…。あ、ま、また気持ち悪いこと考えてた!

「…あ」

…手、離しちゃった。
折角岩泉から手、繋いでもらったのに。

「…んだよ」

岩泉は眉間に皺を寄せ、少し怒ったようだっで、途端に、顔がサーと青くなって行く気がした。

「…俺達付き合わないほうが良かったのかもな」

その言葉にずきっと激しく胸が痛んだ。
…嘘、あたし、なんてことをしてしまったんだろう。一時の感情で、岩泉を拒絶してしまったんだ。岩泉はふい、と顔をそらしてスタスタと歩き出した。あ、ダメ、そのまま行ってしまったらあたし達の関係完璧に終わっちゃうっ…!

「岩泉っ」

きゅっと服の袖を掴み、岩泉を止める。待って、岩泉。まだ、何にも解決してない。岩泉は止まってくれたけど、こっちを向こうとはしなくて、黙ったまんまだった。

「違うのっ…嫌じゃないっ…」
「…じゃあなんだよ」

怒った言い方。振り向いてもくれない。ああ、すっごい恥ずかしい。あたしが気持ち悪いこと考えてたせいで、岩泉を傷つけた。


20151222




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