何が「わかんねえ」よ、あたしがどう思ってるかも知りもしないで。
心配させたくないし、かっこ悪いとこ見せたくないっていうあたしの気持ちもわかんないの!?あたしの勉強不足で自己嫌悪に陥ってるだけなのに、岩泉は…!
…もしかして、あたしうまくいかないことを岩泉に八つ当たりした…?

「ぶっ」
「ん?望月さん」

走りながら考えごとをしていたので、目の前にいたらしい花巻君にぶつかったみたいだ。顔をあげると焦った表情で。「どうした?」なんて聞いてくるから、溜まっていた感情がじわあと出てきた。

「はっはな、まきっくん…あた、あたし…」
「え!?ちょ、とりあえず場所移動だ!あそこまで走れ!」

ぼろぼろ涙を零すあたしにあたふたしながら道の端まで連れてこられた。ここらへんはもう掃除したのか誰もいない。そこに座らされゴミ袋をふんだくるようにとられあたしを凝視する。

「…岩泉と仲良く草むしってんじゃなかったのかよ」
「……」

鼻水やら涙やらが止まらなくて言葉にならない。何か言いたいんだけどそれを察してくれた花巻君は「落ち着いたら言えよ」と石ころをゴミ袋に入れ始めた。落ち着け、落ち着けあたし。とりあえず落ち着くんだ。すー、はー、と深呼吸をして少し違うことを考えてみた。…駄目だ進路のことしか出てこない。もう嫌だな、全部置いて逃げ去りたい。大分落ち着いてきたので、チラりと花巻君を見ると花巻君もこっちを見ていたようで「落ち着いたか」と聞いてきた。

「ごめんね、何か」
「いや別に。それよりどうしたんだよ」
「…岩泉は心配してたのにあたしが意地張った」
「ふーん」

何に対して、とか何を、とか聞いてこない花巻君の優しさにまた泣きそうだ。でも簡潔に言ったらこうなんだもん。岩泉はただ心配してくれただけ。なのにあたしが自分のことだからって、これ以上は言わないって…。

「ちょ、おい、また涙でてんぞ」
「っこれは…戒めの涙なのよ…」
「言ってっこと意味わかんねーけど」
「あたしってすっごいめんどくさい女なんだ…」
「おいおい俺を置いて話続けんな」
「こんな女、岩泉も呆れたよねえ…」

ごしごしと目を擦りながらすがるように花巻君に聞く。きっと花巻君なら「そうかもな」って言うかもしれない。バカみたいなことを聞いた。これで岩泉も、あたしのことめんどくさいって思うだろう。「きっと数時間後には別れようなんて…」とぶつぶつ呟く。サーと顔が青くなるのを感じた。ガサり、と花巻君がゴミ袋を引き寄せた。

「よくわかんねーけど、それで岩泉は別れるような男なのかよ」
「!」
「岩泉はお前のこと超好きそうだけどなー」
「な、な、な」

超好きそう、って…!何を言い出すんだこの男は!「何言ってんのよ!」とバシバシと背中を叩いた。「いてえわばかやろ!」と怒られたけど無視。だって、岩泉があたしのこと超好きとか…わわわ、考えてみたら顔が熱くなってきた!うん、確かに岩泉は懐の広い、器が大きい男…!今回のことは多めに見てくれるかな、あたしが謝ればいいんだ。今の時間はお互い頭を冷やす時間って考えれば…。

「あたし、岩泉に謝る」
「おう。今すぐ行ってこい」
「ありがとう花巻君」
「おー。まあまた何かあったら聞いてやってもいいぞ」
「ううん、もしそれ岩泉見たらきっとイヤだろうからしない!ありがとね!」
「…」

タカタカと走り出すあたし。あ、ゴミ袋花巻君のところにおいたまんまだ。

「…ま、付け入る隙なんて最初っからねーよな」

まあでもいっか。花巻君が何とかしてくれるだろうし。
さっきの場所に帰ったけど岩泉はもうそこにはいなくて。さらに違う場所を探すと、岩泉は及川君と一緒にいた。あたしはさらに加速して、岩泉のところまで走る。

「い、岩泉…」
「…」
「さっきは、」
「何でこっち来たんだ?」
「え」

何だか冷たい声。ジロりとあたしを見てきて。それは何時もの岩泉じゃなくて。だって岩泉、あたしのことそんな風に見ない。岩泉…?

「花巻と話してればよかっただろ」
「!ち、ちが、あれは」
「俺より花巻のほうが話しやすいよな」
「岩泉…」

見られてた…。もしかして、もしかして岩泉は追いかけてきてくれたの。なのにあたしは目の前にしか見てなくて、花巻君に…。途端に喉が熱くなる。あ、また泣くのかなあたし。本当面倒くさい女だ。岩泉は泣きそうなあたしを一瞥して、歩き出した。バレー部のほうにだ。残った及川君が同情の目であたしをみる。

「何したか知らないけど、今岩ちゃんきっと怒ってて何言っても聞かないから、ほとぼりが冷めたら謝ったらいいんじゃないかな」
「……い、いわいずみい…」
「えっ、ちょ、ひかるちゃん!?」
「っ泣かない…これ以上岩泉以外の前で泣けない…」

ぐっと堪え、及川君があたふたしてるのを一瞥して踵を返す。ごめん、ごめんね岩泉。あたしのする行動全てが岩泉にとってストレスになってるのかもしれない。もうどうしようもないな。いつ謝ればいいんだろう。嫌われたくないよ、岩泉に。

20151209






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