「うふふふ〜ねえ聞いて〜」
「やだ」
「何でよ〜」
「あんたのノロケは聞き飽きた」
だって、だってさあ!好きすぎて困ってるんだよ!と言うと、真顔で「うざい」と言われた。最近頬が緩んで緩んで仕方ない。今日も一緒に帰るんだ、というと「はいはい」と遠くを見つめながらそう言った。
「岩泉君と喋ってるときはツンツンしてんのに、いなかったらこんなデレデレなんだもんな〜岩泉君も大変よね」
「う、うるさいな…!最近は素直になってきたもん」
「ちょっとでしょ?あーあ、そんなんじゃあ岩泉君に愛想つかされちゃうよ〜」
「そ、そそそんなわけ…そんなわけないでしょ!」
「わかんないわよー」
ヒヒヒッと笑いながらあたしを指差す。た、確かに気持ちをちゃんと伝えないと前みたいなことが起こるってのは、不可抗力ながら検証済み…。で、でもたまに言ってるし!あっちだってそんな頻繁に…いや結構言われてる気がする…。か、考えたら顔が熱くなってきた…!
「何一人百面相してるの」
「し、してない!」
「あーおもしろーい。今写メったやつ岩泉君に送ってもいい?」
「それはやめて!」
スマホを触っていたのは知ってたけどまさか写真を撮っていたとは。慌てて席から立ち上がってスマホを奪い取ろうとするが上手く奪えない。くっそう!何としても阻止せねば!「何してんだ」ぽん、と肩をたたかれたのでビクウ!と肩を震わせる。
「は、は、はじめ…」
「おっす」
「あー岩泉くーん。今ひかる面白い顔撮ったんだけど見るー?」
「おう」
「いやだめだから!」
慌てて岩泉の前に立ちふさがったけど、圧倒的身長差。全く意味をなしていないので、手を広げたりして邪魔していたが、あたしの手をギュッと握られ下に下ろされた。い、いやいやいや!?朝っぱらからやってくれますね岩泉さん!?もうあたしはこれだけで凄く死にそうなぐらい幸せだよ!?
「なんだこりゃ、ぶっさいくだな」
「アハハハハ!」
「ちょ、見せないでよ!」
パッとスマホを取り上げると、顔が赤くてひょっとこみたいな口になって半目になっているあたし。いやいやこれよく見せたな!?気を遣って見せないとかないわけ!?これただのイジメだし!「同一人物か?」なんて真面目に言うはじめにあたしはますます顔が赤くなった。
「う、うるさいわね!黙って!」
「へいへい」
「ていうかあたしの隣に立たないでよ…」
「それは別にいいだろ」
「ち、近いの!」
「んだそりゃ」
未だに近いのはドキドキして仕方ない。はじめの近くにいるとやっぱり自分がどう見えるのか気になってしまう。前髪、大丈夫だよね。髪の毛くさくない?眉毛はそこまで濃くかいてないつもりだし、岩泉があんまり好きじゃないって言った色つきリップももうしてない。じゃあ、大丈夫だよね。
「…あたし席戻るわー。何か見ててウザいー非リア充のあてつけですかー?」
「別にあてつけてないからっ。あと消してよね、その写真」
「あ、待って、岩泉君に送ってから消すわ」
「送らなくていいから!」
冗談だよー、と言って席に戻って言った友達。今さっきまで友達が座っていた席に岩泉が座る。やっぱりこの距離が丁度いい。授業中は好きなだけ岩泉を見れるし、休憩時間は岩泉が振り向いてくれればずっと話ができる。でも、最近はニヤけてたら「俺の事考えてたのかよ」とニヤニヤしながら言われるので控えるようにしてる。自意識過剰か!ってつっこみたいけど本当のことだから困る。
花巻君とは、あれから全然しゃべってないけど、会ったら挨拶はしている。本当にそれだけ。はじめは「花巻はお前のことがすきなのかと思った」と言っていたけど、全然そんなことないと思う。そんなものだと思うし。
「今日補習は?」
「ある」
「じゃあ一緒に帰るか」
「……うん」
前より素直になったと思う。今だって、少しの間があったけどちゃんとうんって言えたし。「変な顔」と岩泉は笑ったけど、これは嬉しいからニヤけてしまうのを抑えているだけだから。決して変な顔を見せたくて見せてるわけじゃないんだから。
「勉強順調なのかよ」
「うーん。とりあえず夏休み補習増やしてー、模試に向けて勉強かな。今年の夏休みは勉強尽くしになりそう」
「そうか」
「…で、でもはじめが寂しいっていうなら、会ってあげてもいいけど…」
「……ぶはっ!ははは!」
「な、何笑ってんのよ!」
「そういうとこ…くははは…かわんねーよな…」
いきなり笑い始めたはじめに疑問符が浮き上がりながらプンプンと怒ると涙目になっている目を擦り、「ひかる」と名前を呼んだ。
「今日も可愛いな」
「っな…!」
な、何よいきなり…そんなこと言っても嬉しいだけだから…。どうしよう、日に日に好きが募る。前よりも思いが膨れ上がるばかり。本当にあたしって重症だ。岩泉一という人間からいつまでたっても抜け出せない。でもそれでいいんだと思う、充分幸せなんだから。
20151222
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