バカみたいなんて思うでしょうね。
何こいつ?とか思うでしょうね。
だけどひとつだけ言わせてほしい。

…寝てる岩泉超可愛い…。


なぜこうなったのかというと、今日は月曜日で、バレー部はオフの日。一緒に帰ることになったんだけど、あたしが進路のことで先生に呼ばれたので待ってもらうことに。ちょっと長引いたから早く帰って岩泉に謝ろうと走って教室に戻ったら。
自分の席で机に顔を伏せている岩泉がそこにいた。
きゅんきゅんと胸が高鳴りながら岩泉の前の席に座る。他に誰もいない、二人だけってなんか…いい!岩泉のことをどんなに見ても他の人から変な目で見られることないし。肝心の岩泉は寝てるし。微妙に見えるまつげまでが愛しくて、きゅ〜って胸がつぶされるような感覚に陥った。うずうずとしてきた、髪の毛、触ってもいいのかな…。岩泉の寝込み、超襲いたい…。襲ってもいいかな!?襲っちゃいます!震える手に力をこめて、ふわりと岩泉の髪に触れる。…あれ、硬いと思ったら柔らかい…わしゃわしゃしたい!どうしよう何この気持ち!めちゃくちゃ変態みたいじゃん!ちょっと頬触らせて頂いても…ああん!もう!ぷにぷにしてる!どうしようもうどうしたらいいの!?じたばたしたい衝動を抑えながら手を引っ込めた。口元がだらしなく緩んで、こんな顔誰にも見られたくない。こんな可愛い岩泉も見せたくない〜〜〜!すうすうと寝息が聞こえてきて、それにもきゅんきゅんしてるあたし、かなり重症だと思う。…そろそろ岩泉起こそうかな。

「岩泉ー」
「…」
「起きてー」
「…ん…」
「起きた?」
「…」

あれ、起きない。
やっぱり、毎日部活してるから疲れてるのかな。もう少し寝かしといてあげよう。それじゃああたしは岩泉に起きない程度にいたずらもといお触りしちゃっても…いいかな!?いいかな!?

「へへへ…」

起きてないなら、あたしが何してもわかんないだろうし。だめだこの変態気質はもう。岩泉に知られないうちに事を終えよう。どうしよう、触れるのはもう十分したから、なんだろう、小声で何か言うとか…!?普段言えないこととか言っちゃうとか…!?

「す、すすす、す、」

だめだ!声に出すのはまだやっぱり無理みたい。でもあれだ、本人を目の前にして練習できるなんて滅多にない!こんなの、するしかないじゃない!

「…す、…すき、すきだよ、…は、じめ」

言った後顔に熱が集まった。どうしようすっごい恥ずかしいよこれ。でも練習して、いつでもぺろっと言えるようにしとかないと、あたしだって余裕を持って岩泉に接したい!

「…だいすき。…ちょーーー、すき。…めちゃくちゃ、すき…だよ」

こんなこと言う時あるのかってぐらい浮かんでくる好き。それぐらい岩泉のことが好きで、好きでたまらない。でもちょっと言っただけでもすごく軽くなった。言えそう、岩泉が起きてる時にも。よし、そろそろ起こそう。それで言うんだ、岩泉に、好きって。

「起きて、岩泉」
「…」
「…はーじーめー」
「んん、んだよ…」

眉間に皺を寄せて、ようやく顔をあげた岩泉。ねえ、今名前で呼んだんだけど、そこはスルーするんだ。結構勇気振り絞ったんだけどな。いやいやそんなこと今どうでもいい。あくびを一つして岩泉はあたしを見つめる。終わったんだな、っていう岩泉にあたしはこくりと頷いた。帰るか、と荷物を持ち始めたのであたしもリュックを背負った。教室を出る岩泉の後ろを追いかけて、横に並んだ。手、繋ぎたいな…。だめかな、だめかな。…だめだ、今日はもうだめ。よし、練習の成果を見せなきゃ!

「い、岩泉…」
「ん?」
「あの、遅くなってごめん」
「おお、俺も寝てたしな、すまん」
「いや、疲れてるんだし…。えっと、あのね」
「なんだ?」

言わなきゃって思ってるのに、言葉にできなくて。きゅっと下唇を噛んだ。これからこういうことがたくさんあるんだろうから、今言わないとここから先言いたいことも言えなくなる。あたしはぎゅっと服の裾をつかんだ。

「ま、待っててくれてありがとねっ…えと、遅くなったのに文句も言わないとことか、その…すす、好きだよ!超好き!」

カアア、と熱くなる頬。岩泉はきょとんとしたのかびっくりしてるし。あたしはその沈黙に耐えられなくて、「ちょっと盛ったかも…」と言うと、岩泉は笑った。

「好きじゃねーのかよ」
「…好きだし!」
「何キレてんだよっ…ははっ…お前、まじかわいーわ。俺も好き」

お前のそういうとこ、とあたしの頬をぷに、と人差し指で触れた。そこにまた熱が集まってきて、きゅううと心臓が潰されたような感覚。心の中であたしが叫んでる。だいすき、だいすき、って。

「今日は素直だな」
「っはあ?別に、言いたかっただけだから。素直とかじゃないし」
「はいはい」
「バカにしてんでしょ!」
「俺の彼女は可愛いな」

う、とそれ以上言葉がでない。そんなこと言われると、嬉しくて反論できないじゃない。岩泉はニヤニヤしながらあたしを見る。

「つーか俺さ、微妙に起きてたかもしんね。お前俺が寝てた時なんか言ってたろ?」

あんま聞き取れなかったけどな、と付け足す岩泉にあたしはこれでもかってぐらい顔が熱い。

「言ってない!帰る!」
「もう帰ってんだろ」

待てよ、と手を掴んだ岩泉に、あたしはぎゅっと服の裾を握った。何、今日今までにないくらい幸せ。繋いだ手を離されないように強めに握ると、「ははっ」って岩泉は笑った。


20151121




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