「お前土曜補習な」
「は?いやだ」
「80点以上取れなかった奴は補習だっつっただろ!」
この前のテストで75点だったあたしは補習になってしまった。しかも土曜日!?やば、バイト休まないとじゃん。
はあー、とため息をつきながら携帯でバイト先に電話するのだった。
*
「やっと合格できた…」
げっそりとしながら教室を出る。外を見ると野球部が練習していて、あ、そういえばと体育館を見に行った。
「え。練習試合してんの?」
どこの高校かは知らないけど練習試合してるみたい。ギャラリーも中々いるみたいで、あたしはそのギャラリーに混ざることにした。相変わらず及川君の歓声はすごいなあ。まあ及川君主将だし、実際実力もあるみたいだから。まあ一番の理由は顔だろうね。あの甘いマスクに惚れる子はさぞたくさんいるんでしょうね…。まあ、あたしは岩泉派ですけど。
あ、そうだった岩泉見に来たのに全然見てない!あたしは目を凝らして岩泉を探した。…あ、いた!
「きゃあああかっこいい…」
今あれしたね!なんだっけ!?アタック?スパイク?よくわかんないけどあれ!めっちゃ高く飛んだ!やばい!超かっこいい。今岩泉近くにいないからこんなこと呟いても大丈夫だよね?周りも及川君かっこいいって言ってるしバレないよね!?やばいすっごい興奮してきた。
「あ、写メったの送って!」
となりの女子が写真を撮ったみたいだ。あ、そうだあたしも…と携帯を取り出した。
数メートル先にいる岩泉は超輝いてる。眩しい、かっこいい。これはもう撮るしかない!!
パシャっと音がしたので焦った。歓声で聞こえないと思うがみんな気をつかって無音にしていたのだ。すっと岩泉のほうを見ると…こっちを見ていた。
…やばい!盗撮したのばれた!?
だけど岩泉はすぐに目線を前に戻した。まあ試合してんだしそりゃそうか。あたし今すごく心臓がばくばくしてる。
「はあ…これロック画面…いやばれそう…でも朝起きて携帯見て一番最初に岩泉見れるなんて幸せ…」
ぶつぶつと独り言を言っていたら君悪がられたのか周りの女の子が引き気味に離れた。別にいいけどね!あたし岩泉の前じゃなかったらこんな感じだもん!こんなところ見られたらあたし死ぬもん!いや岩泉が生きてる限り死ねないけどさ!
「お前昨日写メ撮ってただろ」
「…なんのこと」
ぎくっと肩を揺らしながらもしらばっくれるあたし。すっかり忘れてたけど岩泉見てたんだよね、あたしが岩泉撮ってたこと…おかげで今日も岩泉と目が合っておはようしてるけどね!幸せ!
「お前が及川ファンだとは思わなかったが、フラッシュとかたかれるとこっちも迷惑だからやめろよ」
あたしがしらばっくれたことは無視して注意する岩泉。怒られた…ちょっとゾクゾクしてきた。そういえばフラッシュオンにしてたな、ごめん岩泉…。……は!?
「あたしが及川君のファン?んなわけないじゃん!」
「は?お前及川撮ってたんじゃねーの?」
「あたしは岩泉をとって…」
はっと口を手で隠した。うそ、やばい。口に出た。ドキドキばくばくと心臓は変な風になって、もうなんだかうるさいし熱くなってきた。やばい、どうしようどうやって切り抜けよう。
「は?俺のこと撮ってたのか?」
「…あ、あんたのぶっさいくな写真撮って送りつけようと思ってたのよ!」
「最低だな」
とっさに出てきた言葉が最低すぎてあたしも岩泉の言葉には同意してしまった。…ってそういうことじゃなくて。
やばい、また好感度下がっちゃった。
…てか、嫌われちゃったかも。この前変な絡みしたし、今度こそ…。
「…んだよ、変な期待させやがって」
…え?
岩泉がぽりぽりと頬を掻きながらあたしじゃない違う方向をみて呟いた。
「い、わいず」
「岩泉ー英語の教科書貸してー」
でた!英語の教科書貸して女!ばっと見ると、確かにみんなが言ったとおりの容姿をしていた。
「お前次変な落書きしたら貸さねえから」
「分かってるよ、あたしと岩泉の愛の教科書だもんね」
「きめえ」
あ、あ、愛の教科書!?
なにそれなにそれやっぱり付き合ってんの?その子は岩泉にじゃあねといって早々と帰って言ったけど、やっぱり付き合ってんの!?ね、ねえ、岩泉…。
「付き合ってねーよ」
あたしの視線に気づいたのか、岩泉はそう言ってはあ、とため息をついた。
「…あたし何も言ってないんだけど」
「目が訴えてた」
「…へー」
やっぱり分かりやすいのかな!?もしかしてこのまま行くと岩泉に気持ちバレるかな?もうそろそろやばい気がするけど今の岩泉の顔超かっこいいから写真撮りたい!
20150913
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