さて、どうしたものか。
岩泉と仲の良い髪の毛くるくるの女子仮にXさんとする。
そのXさんと岩泉がくっついたらあたしどうなるんだろう…。とりあえず素直に喜べはしないだろうな。はあ〜すっごい気になる。でも付き合ってないって…でも好きなのかもしれないし。もうやだ!こんなことでうじうじしている自分が一番いやだ!
「うわー!」
「あんた何叫んでんの」
叫んだら友達に白い目で見られた。いや、ちょっと叫びたくなっただけだよ。体育なんだから許してね。
「ねー、髪の毛くるくるの性格キツそうな女子って誰?」
「はあ?」
友達は怪訝そうにあたしを見た。いや、はあ?ってなるの分かるよ。でもさあ、それだけしか情報がないんだよ!だからそれ以上何もいえないし…。
「あー分かった。よく岩泉君に英語の教科書借りに来てる子でしょ」
「え、知ってるの?」
「よく来てるよ」
え、知らないのあたしだけ?いっつも岩泉しか見てなかったからそこまで集中してなかった…。可愛いのかな、可愛いのかな。どんな子なんだろう、借りに来る子…。胸がぎゅうってなって、すっごい苦しい。あんまり可愛かったらあたし絶対勝てないもん。
「その人可愛い?」
「普通に可愛いー…ていうか美人?」
「えー…もうやだ」
絶対無理だって。あたしなんてがんばってこれだから。睫毛は褒められたけどね!睫毛だけだけど。
「まあまあ。アンタにはえくぼというものがあるじゃない」
「は?」
「えくぼは恋の落とし穴って言うでしょ」
ぷに、と頬を人差し指で押してみる。えくぼ、かあ…。あたしえくぼ嫌いなんだよね。何でそこへこむの?というかなんでそこだけなくなるの?って感じですっごい嫌だ。女優みたいにくしゃくしゃに笑っても可愛い感じになりたい。はあ。…ていうか、え。
「何であたしが岩泉のこと好きって知ってんの…?」
「見てれば分かる」
嘘。ポーカーフェイスなつもりなのに。やっぱ分かりやすいのかなあ。でもでも、あたし結構岩泉にはツンツンだよ?あんな可愛くないこといってるのに、好きに見えるって…。いや、やっぱり顔はニヤけてるのかな、ポーカーフェイスできてないのかな。
「もう無理〜」
「大丈夫あんたは可愛いよ。ところで今日眉毛どしたの濃いけど」
「綿棒なくなって他に代用するもの探してたら時間なくなってこの有様よ」
ふっ…と笑うと友達は何威張ってんの?って笑うからあたしも笑ったら、それだよ!って指さされて焦った。それ、らしい。
*
「い、岩泉」
「ん?」
「やあ」
にかっと不自然に笑って見た。なんだこれ。友達後ろで大爆笑してるし。
「…お前頭でも打ったのかよ」
「なわけ」
「体育で怪我でもしたか?」
「してないわ」
すごいびっくりされてる。当たり前か。用もないのに話しかけて、やあ、って…。
あたしだったらは?ってなるところを岩泉は聞いてくれる、優しい!そういうところいいと思うよ、うん!
「い、岩泉が一人で暇してるから来てあげたのよ…」
ぎこちない笑み。あたしにしてはがんばった。絶対言わないもん、こんなこと。岩泉は信じられないという顔をした。いや、岩泉失礼でしょ。
「最近お前とよく話すよな」
「確かに」
「なんかあんの?」
「別になんもない。気分」
嘘です。岩泉と喋りたくてたまりません。今だって友達の悪ノリでここまで来たけど正直話しかける口実できてすごい嬉しいです。今にも死にそうです。
じとって見てくる顔も大好きです。一眼レフほしい。それで岩泉の写真撮りまくりたい…。
「…何で英語の教科書だしてんの?」
「借りにくるやつがいるから」
「へ、へえ…髪の毛くるくるの…性格キツそうな人だっけ…」
「何だそれ。微妙に違うな。パーマかけてんのかってゆー髪型したつり目の女だよ」
へえ…そんで結構可愛いと。
「好きなの?」
「は?」
やばい、ミスった。
聞くのここじゃない。もうちょっと順序踏まなきゃいけないのに。いきなりこれ聞いても嫌な顔しかされない。今だってほら、嫌そうな顔。
「別にふつーの友達だ」
「ふつーってどんくらい」
ちょ、あたしなに言ってるんだろう。
なにつっかかってんだろう。
こんなこといっても迷惑なだけなのに。
「どんくらいって…お前との距離感ぐらいだよ」
あたしとの距離感がどのくらいかよくわからないのによく言えたな。
ていうかなんであたし基準。意味わかんないし。岩泉、もっと違う例えなかったのさ。
でもあたしも暴走したからびっくりしたんだと思う。それなら、仕方ないや。
「じゃーね岩泉!」
満面の笑みで手を振った。こんなにと笑ったの久しぶりだなあ。
どう?あたしのえくぼは。友達に最後はぜったいそれ使えって言われた。あんまり好きじゃないけど岩泉を恋の落とし穴に落としてやろうと思った。
岩泉はびっくりしてぽかーんと見ていた。それを、友達はみていた。
「キャラ変わりすぎてついていけてないんでしょ」
ヒーヒーとずっと笑っている友達。
「…これがみたかっただけか」
20150913
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