「岩泉って調子のってね?」
「だよなー及川と幼馴染?なのをいい事に女子と話してよー」

岩泉の悪口を聞いた。
…許せない。
今の私は心穏やかじゃない。腸煮えくり返ってる。
だってだってだって!
岩泉の良いところなんてたくさんあるじゃない。
まずは意外と優しいところとか、笑ったら可愛いトコとか、割と勉強できるところとか、ちょっと子供っぽいところがあるとか、誰にでも話しかけるトコとか、まあ数え切れないぐらいあるわけで。なのに岩泉の悪口なんて…胸糞悪い今にも殴りかかりそう。
だけどここは廊下で、しかも相手は男子2人。クソ。女だったら言い返してたのに、男だったら何されるかわかんないから迂闊に近づけない。だけどまあまあ近くで、外を見つめているという設定で聞いている。
でも2人の悪口はぼそぼそからいつのまにか大声に変わっていて、「あいつほんときめーよな!」って大声で。あたしはその言葉に何かがぷつんとキレた。

「いい加減にしなさいよ!」

あたしはその男子2人の前に来て、叫んだ。男子は少し怯んだが、「何だよお前」と言ってきた。何だよお前ってお前らがなんだよ!岩泉の悪口言ってイケシャアシャアとしてんじゃねーよほんといい加減にしろ!!

「人の悪口言って楽しいの?あんたら岩泉よりも偉いわけ?」
「んだよその言い方…俺たち別に…」

片方の男子がもう片方の男子の袖を引っ張って教室に戻った。はあ、呆気な。まあちょっと嫉妬っていう部分があったんでしょうね。岩泉かっこいいからね。そりゃひがむわー。仕方ないない。でもねえ、あんな大声で言うことないよね。…皆聞こえてたのかな。ハッとしてあたりを見渡すと、案外聞こえてなかったのか皆ワイワイしていた。よかったー、これ岩泉とか見てたら恥ずかしい。はあーとため息をついて教室に戻ろうとくるりと後ろを向いたら。

「……」
「…や、あの、まあ聞いてたんだけどよ…」

岩泉がいた。
吃驚して声が出なかった。目が点になるとはこのことだ。だってだって岩泉がいると思わないじゃん?奇跡じゃん?どんな漫画だよ…。いやいやそれよりも。聞いてたの?え、待って、超恥ずかしい。声でない…。

「…えーと」
「……別に岩泉のために言ったんじゃない。そういう悪口言うのが許せなかっただけだから」

どんなツンデレだよ。意味わかんない。結局は岩泉のためじゃん。もうやだ恥ずかしい。逃げたい。早く教室戻りたい…。

「でも、怒ってくれただろ」
「…」
「ありがとな」

少し照れたような笑み。ボンッと頭がショートしてしまった。あたしはポーカーフェイスを装いながら、「どういたしまして」とツンとしながら言って教室にそそくさ戻った。
……どうしようどうしよう、何あの笑った顔!可愛すぎる!!どうしよう心の中でシャッターは切ったけどさあ!実際に写真撮って現像して額縁に入れて部屋に飾りたい!初めて見た!可愛い!可愛すぎる!
あたしの後に入ってきた岩泉は男子に声をかけられていた。

「あれ?お前これ英語の教科書じゃん。忘れたんか?」
「ちげー。返してこねえバカがいたから取りにいったんだよ」
「ああ、あの髪の毛くるくるの性格キツそうな女子?」

女子、と言う言葉にあたしはぴくっと動いた。
は?女子?いやまあ岩泉は友達多いから女子と友達でも全然ありえるしいいけど。え、そんな仲の子が…?

「付き合ってんのー?」
「んなわけねーべ。つかちょっと貸した借りたぐらいで付き合うっていうほうに持っていくのやめろ」
「キャーこわーい」

よかった、付き合ってるとかじゃない…。
いやでもわかんない!
ああどうしよう!
やっぱり心穏やかじゃない!


20150911

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