岩泉なんか、あたしに対する何かが変わった気がする。
なんかあたし遊ばれてない?可愛いとか言って反応みて楽しんでるんだ、きっと。
なんだが岩泉のペースに巻き込まれて、すっごく悔しいような、でもあたしの秘めたる何かが開きそうな予感がする。いやいやだめだめ。これ以上重症になったら手に負えないから。でも目で追うぐらいならいいよねってあ、よだれ垂れそうだった。ふとこの前言われた「可愛い」を思い出してニヤけてしまう。えへ、岩泉に可愛いって言われちゃった。……すっごい根本的なこと忘れてた。岩泉好きな人いるんだった。
…も、もうあたしが好きっていう設定で妄想してもいいかな。いいよね。片思い女子なら誰しもする道だもん。やばい、ニヤニヤ止まんない!

「望月、手止まってるぞ」
「うあっはい!」

ばっと隣を見ると先生があたしを覗き込んでいて、しまったいま授業中だった。板書全然してない、と急いで取り掛かろうとシャーペンを握った。黒板の端に、岩泉が見える。…え、あたし見てる?ちらりと岩泉を見ると、口パクで「ば、か」と言ってきた。
あたしもすぐに「う、る、さ、い」と口パクで返す。そして黒板の文字をノートに書くふりをしてにやけた。
だって、だってさあ!岩泉の口パク!岩泉のバカ!もらいました!ごちそうさまです!きゃあああ叫びたい!この教室に岩泉がいなかったらきっと叫んでます!最高!きゃっほう!



「きも。引くわー」
「ふふふ」

友達にひたすら岩泉のことを語っていたらガチのほうでドン引きされた。うんまあこれで分かるー!とか言われるわけないけどさ。いいの。密かに思うだけで。あ〜幸せ。

「もうなんていうかさ、これだけで十分っていうかさ」

へへって笑いながらちらっと岩泉を見ると…口をあんぐりと開けてしまった。

「ちょ離れなさい」
「徹が走って追ってくるからでしょ!?」
「お前らうるせーよ…」

あ、あの教科書貸せ女子が岩泉の後ろに隠れて、しかもどさくさに紛れて服掴んでて。ちょっと!及川君の彼女でしょ!?及川君の服掴んでたらいいじゃないやめてよ!岩泉の服掴むな!ていうか離れてくれ距離近すぎ!

「ぶっ…百面相してんじゃん」

友達はあたしを見て笑ってるけど本当にそれどころじゃなくて。いつまでたっても終わらないそれはそろそろ限界に近い。あたしは耐え切れず席をたった。のそのそと教室から出ようとした瞬間。

「おい望月!助けろ!」

岩泉はあたしの苗字を呼んで、あたしはびくりと体を震わせた。ちょ、ちょっと岩泉。嬉しくてたまらない。丁度岩泉の近くを通って教室を離れるところだったからきゅっと方向を変えた。

「岩泉モテんね〜」
「うるせえどうにかしろ」
「あたしは部外者なんでむりでーす」

ピースをしてニコッと笑う。嫌味ったらしく。本来のあたしってこんなんだから。内心動揺してるけどそれを出さないあたしは将来女優にでもなれるんじゃないのかと思う。

「がんばってね」

にひっと笑って教室から出る。最後にちらりと見たとき、もう彼女は服を掴んでいなかった。ほっとしながら、ジュースでも買うか、と歩き出した。
それにしても、岩泉に助けを請われるまでになったとは、あたしも成長したなあ。


20150923

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