顔を見れば幸せ、なんて恋する乙女は誰もが思うだろう。
でもあたしはそろそろそれじゃ我慢できなくなって。岩泉のスベスベそうな肌をぷにぷにしたいし逞しい胸筋に抱きつきたいしお姫様抱っこされたいしにこりと微笑んで好きだとか愛してるとか言われたい。…妄想は膨らむばかりで、今日岩泉に可愛いなんて言われたいとか話しかけてほしいとか手繋ぎたいとか日に日に思うことは増えてきて。
どうしたら全部叶うかな。
とりあえず、岩泉と話がしたい。
いつもと違う髪型をしてもメイクをしても岩泉は話しかけてはくれないし。
いつも近くにいくかあたしが話しかけてるし。
何のようもないのに近くになんていけないし。
一体どうしたらいいんだろう。

(どうしたらいいんだろうって思うなら行動しろ、だよね)

でも何もないんだから仕方ない。はあ、とため息をつきながら携帯を触る。あ、ロック画面岩泉のまんまだったんだ、変えなきゃ…。設定から背景を選んでどれにしようか迷うけど、やっぱり岩泉が良くて。しばし眺めていたら影が作られた。

「何にやけてんだ?」

ばっと顔をあげるとそこには岩泉。ええええーー!!!岩泉!?とりあえず携帯は話しかけられた瞬間に隠したけど、いや、本人!?ちょっ、まじで見られてないよねあああああ!

「み、みた?」
「いや」
「そう」

よかったー。ほっと一息つくけど結構やばい。だってにやけてるところみられた。しかも岩泉の写真で!もうちょっと見たかったのに。

「イケメンでも見てたのかよ」
「まあ、そうね」

間違ってない。イケメンだもん岩泉。ていうか岩泉からイケメンっていう言葉が出てくるなんて。ちょっと可愛い。岩泉はムッとして「誰だよ、芸能人?」と聞いてきたので「違う」とだけ言った。待って知りたい感じ?絶対教えられない!!

「ここの学校?」
「うん」
「は?誰だよ」
「あんたに教えるわけないじゃない」

絶対教えない!死んでも教えない!知られたらドン引きされてあたしは爆発するから!岩泉はムカついたのか誰だよとキレ気味に聞いてきた。あんたそんなにイケメン嫌いなの?

「及川か?」
「…及川君なわけないじゃん」

あたし及川君に興味ないし。というかイケメンで及川君出すとか岩泉もやっぱり及川君のことイケメンだと思ってるんだね。しかしどうしよう、冷や汗やばい。というか岩泉から来てくれるなんて。あ、教科書取りに行くついでって感じなのかな。あたし席後ろのほうだし。…はあ、待って、なんかすごい焦ってきた。

「お前がイケメンでにやけるとか」
「世の中の女子なんてそんなもんよ」

あたしは岩泉以外ではにやけないけどね。とりあえず岩泉から話しかけられたことはすごい嬉しくてたまらないけどこの状況は結構やばい。

「い、岩泉だって可愛い女の子みてニヤけたりするでしょ?」

しまった、この言い方はなんか、キモい。というかこれでうんって言われたらすごい傷つく。ああ、もうちょっと可愛い女の子に生まれてくればよかったな。
岩泉は「は?」というような顔つきであたしをみてきて、何だか少しホッとした。

「まあ、それなりに」
「えっ…」

嘘、岩泉って可愛い子みてニヤけたりするの?嘘嘘嘘ー!!!待って、今すぐ整形したい、可愛い子になりたい。まず鼻をいじって目をもっと大きくして口は平べったくしてうわあああもうどうしたらいいのあたし!!こんなんじゃどうしようもない!

「何焦ってんだ、冗談だ」

笑いながら岩泉は、あたしの髪を撫でてきて。
一瞬時が止まったようだった。そしてあたしはハッとしたときにはもう遅くて、体温が上昇して仕方ない。
だけど岩泉から目をそらせなくて、口がぽかんと開いてとにかくもう、どうしたらいいか分からなくて。

「あせって…ない、し。撫でんな、ばか」

といいつつも、岩泉の逞しい腕に触りたくてゆっくりと腕を握って頭から離す。でも今回はあたしのポーカーフェイスというか、そういう問題じゃなくて、顔色の問題で。だって、だって岩泉があたしの頭撫でてきて…うわあああ!顔が熱い!ついでに手も熱い!何か全部熱い!

「ふはっ、可愛いな」

岩泉はそう言って、ニッと笑った。
えっちょっ、え?
あ…えっと。
えっと…。
待って頭が上手く回らない待って、一旦待って。
岩泉はそのまま自分の席に戻って、あたしはまだ顔が熱くて。手で顔を覆いそのまま机に伏せた。

「あたしの完敗…」

だめ、色々もう駄目。
とりあえず、岩泉がかっこよすぎて死にそう。
ほんと、重症だ。

20150922


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