タオルを洗濯して、服のブランドの袋の中に入れて持ってきたあたし。
さて、これをどうやって渡そうか…。
目指すは数メートル先の岩泉。岩泉〜!こっち向いて!うお〜こっち向け!向け!あっ、隣の席の女子と話し始めた…ちょ、ちょっと!こっち向きなさいよ!あ、向いた!…と思ったら違う方向見ただけだった。
くううとやきもきしてるけど、これあたしから話しかけに行けばいいだけなんじゃあ…?だめ、だめだ話しかけれない。だってむり。いつも岩泉が話しかけてくれてるし。タオル如きで呼ぶなとか言われそうだし。ああもう!
「どうしたらいいかな!?」
「普通に渡しに行けば」
つん、と冷たく返され涙目。
だって、そんなすぐに返せるんだったらこんなことしてないよ!いざ行こうとしても恥ずかしいんだよ!本当にこの性格やだ!なおしたい!…直すためにも行ったほうがいいのか。ぐぎぎと足を出して、一歩ずつ歩き出す。く、岩泉までの数メートルが遠い…。
「なにしてんだ」
「はっ岩泉」
「おう」
やった!岩泉から話しかけてくれた!これはもう、奇跡!
「こ、これ。洗ってきたから、はい。どうもありがとね」
「お、おう…袋は返すわ」
「うん」
やった、言えたぞ!岩泉が袋からタオルを取り出し、渡そうとしたので、それを受け取ろうとしたら。
「わっ」
ばっと手を引っ込めた。
やばい、しくじった。あたしが持ったのは取っ手の、岩泉が持っていたところで。いやなんでそこ持とうとしたのかな触れてしまった岩泉の手を!直で!ちょ、もっかいもっかい!リプレイ!
…ってこんなこと言ってるけど実際には真顔で。
「…ごめん」
「おう。なんかお前今日めちゃくちゃ挙動不審だな」
「な、なわけ」
「今日ってか最近。ずっとそんなことなかったのにな」
そ、それは岩泉と最近よく話すからだよ。だって前までは見てるだけだったんだもん。岩泉が話してくれるからこんなことになってんじゃん。今だって心臓バクバク言ってるし。
「きもいよね」
「は?」
「あたし」
きっと心の中読まれたらドン引きどころじゃ済まないと思う。ぜったいやだ。読まれないためにポーカーフェイスしてんのに。
岩泉はじっとあたしをみて。
「別にきもくねーよ、ばあか」
へって笑って見せるから、体温が上昇して行くじゃないか。
「何赤くなってんだ?惚れたか」
「ほ、惚れてないし!」
「はは、惚れんなよ」
なに、そのキザな言葉!まってめちゃくちゃかっこいい岩泉そんなこというの!?今まで言われた中で一番嬉しい!きゅんてきた!この岩泉一番いいわ!ああ〜そのまま罵ってほしい〜。
「…ん?タオルもう一枚ある」
「あっ…それはあげるやつ」
まだ新品だし、どうせ使わないからあげようと思ってたんだった。岩泉は少し感動してるみたい。
「さんきゅ!」
「い、いいえ」
やっぱりその笑顔もなかなか素敵。まあ結論を言うとどんな岩泉も好きってことだよね。はあ、タオル気に入ってもらえたみたい。よかった、女の子用には見えないし。それでじゃんじゃん汗吹いちゃってください。
「しっかしめんこいタオルだな」
「ぶはっ岩泉には似合わないね」
「お前がくれたんだろが」
つい笑ってしまうと岩泉がすかさずツッコミを入れた。もう!めんこいのはあんただよ岩泉!
20450915
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