連れて行かれたのはショッピングモールだった。どこに行くのかと思ったらやれ服だのやれ小物だの女子が行くところばっかり。俺連れてきても何も楽しい事ないと思うんだけど。絶対これ一人で行ったほうが楽しいと思う。俺がやることといえば荷物もちぐらいで、もしかしてこれを狙ったのか?あいつってそんな奴だったっけ。でも楽しそうなんでとりあえずぼーっと見とくことにした。

「国見君っこのイヤホンジャック可愛くない?」
「可愛い」
「じゃあこれは?」
「可愛い」
「もー!もっとちゃんと答えてよ!」

ぷりぷりと怒ってくるから、じゃあ適当に見渡して、アヒルみたいな目が一本線の変な生き物のイヤホンジャックがあったから、「これ可愛い」と言ったら、彼女は顔を輝かせた。

「私もそれ可愛いって思う…!もしかして国見君好き?」
「え」
「ねえ、じゃあさじゃあさ!私このピンク色買うから国見君この青色買わない?」

ふっ、と時が止まったかのようだった。俺は少しフリーズして、「は?」と言ったけど彼女はキラキラとその瞳で俺を見る。はあ、泣いてなかったら本当犬みたいだな、この人。俺はため息をついて「いいよ」というと彼女はそれはもうとても喜び、「早くお会計しにいこ!」と俺の袖を掴んだ。

「わー…私友達とお揃いとか初めて」
「よかったな」
「国見君つけてよ!」
「分かった分かった」
「ダメ、今ここでつけて」

何か今日はわがままだなあ。俺は袋からイヤホンジャックを取り出してつけた。なんかぶっさいくだなー。よく見たら全然可愛くないじゃん。彼女は満足したのかうんうんと頷き、俺の服をまた引っ張った。次はどこにいくんだろう。と思ったらちょっと待っててと言われた。何だろう。とりあえず俺はベンチに座ってこのイヤホンジャックを見つめた。うわー、ぶさいく。こんなんのどこがいいんだか。浮かぶのは彼女の笑った顔で。俺はぎゅっとイヤホンジャックを握り締めた。

「お待たせー!」

紙袋を持って、パタパタと数分後。彼女は帰って来た。ニコニコと笑いながら紙袋を差し出す。

「あげる!」

はあ、はあとまだ息をつく彼女。俺は紙袋を持って中を見た。

「塩キャラメル…?」

袋の中にたくさん入っている種類の塩キャラメルが二袋入っていた。もしかして、これ買いに行ってたのかな。今?別に今でもいいじゃん。明日持ってくるとか…いや明日じゃなくて気向いた日。ていうか買わなくてもよくね。あげる必要俺にあんの。ねえ…。

「…ありがと」

考えてたこととはまるっきり違う言葉で。彼女はニコッと笑った。本当バカだ。ぎゅっと紙袋を握り締めた。これ渡して俺に媚売って。そんなんだから男好きって言われた李とか女の友達ができなかったりするんだよ。彼女は楽しそうに歩きだした。俺も歩き出す。今だけは自分の気持ちに素直になってもいいだろうか。


20150909




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