そこへ来て、二人とも座り込む。
だけどどちらとも話そうとしなくて、無言が続いた。
どうしたらいいんだろう、こういうとき。
勢いあまってここまできたけど、いざ考えなしでって思うと結構つらいところがあるな。
はあー、とため息をつくとびくりと木原の肩が揺れた。

「く、国見くん…」
「ん?」
「も、もしかしてまた怒ろうとしてるの…?」

ビクビクと俺を見る彼女。うん、違うけどね。俺はびよん、と彼女の頬をつねった。柔らかい。「な、何」と涙目で見つめる彼女にでこぴんをした。顔が赤くなっていく彼女に俺はふっと笑った。

「違う。ごめんって謝りたかった」
「え…?」
「あ、あのときのことじゃない。あれは俺悪いって思ってない。昨日のこと…ごめん」

彼女のほうに体をむけ、頭を下げたが何も反応が無い。ゆっくりと顔をあげると、そこには涙をぼろぼろと流す彼女が。

「えっと」
「…ぐすっ…うっ…ひくっ…」
「ごめん、自分に対して泣かれると本当にどうしたらいいかわかんないんだけど」

でもなんだろうこの気持ち。
いつも冷めた目で泣いている彼女を見たのに、いざ自分に対して泣かれると。こう違うものなのか。とりあえず、あの腸が煮えくり返るような気持ちは出てこない。

「くっ国見君のっ…そういう意地っ張りなところ…いやだっ」
「…うん」
「私のこといつも…めんど、くさいとか…うざいとか、言うのも…凄い傷つく」
「うん。ごめん」
「なのっに、なのに、それでも私のこと、きら、いとか言わなかった…」

ぐすぐすと涙を流し、しゃくりあげながらそういう彼女に、俺はただ背中をさすることしかできなかった。
今、彼女は自分の思っていること全部言おうとしているんだ。
だから俺は、黙って聞かなきゃ。

「あの時庇ってくれて…ほんと、はすご、い…ぐすっ、嬉しかった、の…。でも、また国見君の悪、口言われるって…ひっく、考えたら…こわ、くて…。私もこれ以上嫌われたくなくて…必死、だったの…」

涙を拭いながら、必死に言葉を作って言ってくれる。それは全部俺に対することで、俺に対する優しさで溢れていて、胸が熱くなった。

「…うん、そっか…それは、俺も悪いじゃん…。でもさ、俺はそれでも言ってほしくなかったんだ。お前が大事だから、自分を悪く言うようなことしてほしくなかった」

俺も、思っていることを伝えることにする。
きっとこれで、ヒカリが見えてくる気がするんだ。

「…ばかだね、私たち…お互いに、お互いを助けようとして、ぶつかって離れていって…」

そうだ。
俺たちは、互いにカバーしあって、そして壊れた。
お互いを思いすぎて。

「…離れたほうがいい、っておもった…?」
「…思わなかったよ。どうでもいいやとは思ったけどやっぱり、一緒にいたい」

彼女はまた泣き出した。
ああ、やっぱり泣き虫だなあ。
この泣き顔、またたくさん見るようになるんだろうな。

「国見君のばか…。待ってた、のに…話すこ、とないって…ひっく、すっごい傷ついたもん…」
「ごめん。及川さんと話してたのがムカついて」
「…お、いかわ、さん…?」
「だって、好きなんでしょ。及川さんのこと」

彼女はぐしぐしと目をこすりながら俺を見つめる。目が真っ赤に充血して涙袋がぶくぶくと大きくなっていて、まあ酷い顔だ。だけど、この顔を改めて見た気がする。
いつも横顔か、揺れる髪の毛ばかりで、めんどくさいと思いながら空を見上げていた。そうか彼女はこんな顔で俺と話していたんだ。

20150915






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