人間、こんなことになったらそう簡単に話すことなんてできない。
だって、昨日突き放したのに今日軽々しく話しかけることなんてできるはずない。
さて、どうしたものか。
彼女は今日も沈んでいた。いや、昨日よりももっと。
…俺のせい、だよな。
また大きくため息をついた。何もできない、どうすればいいか分からない。ただただ彼女を見つめるだけ。見つめる先には君がいて、突然バチッと目が合った。
少し泣きそうな顔になりながらも、ゆっくりと彼女は目をそらした。
…そりゃそうか。

「もーどうしたらいいんだよ」

…あの後、及川さんと一緒に帰ったのかな。
それだったら絶対及川さんに惚れてるだろうな。そんで、彼女がいるっていう嘘もバレて、俺はますます彼女から遠ざけられるだろう。
仕方ない、自分がしたことだ。自業自得って奴。
それを今更払拭しようとも思わない。ただただ、彼女に俺の気持ちを伝えたいんだ。
俺は机に突っ伏した。こんなの久々だな。いつも彼女と話していたから。あいつと話すの、結構退屈しなかったな。喜怒哀楽激しいし、俺の話にもちゃんと相槌打ってくれるし。結構かわい―――
ハッと起き上がった。今俺は、何を思ったのだろうか。
いや、木原は普通に見て可愛い。うん。でも今のは間違いなくそれだけじゃなかった。
…本当やばいな、そろそろ抑えられそうにない。

「はあー…」

無理、無理。
もう無理だって。
俺は彼女のほうに顔を向けた。まただ。また男子が彼女に話しかけてる。イラッと来て立ち上がった俺はずんずんと彼女のほうに進んでいく。

「な、今度一緒に行こうぜ!」

どこに?やめてよ。何でお前と一緒に行くんだよ。木原もえっと、と遠慮がちに下を向いていた。俺が近くまで来ると二人ともこっちを向いていた。男子のほうが「国見?どうした?」とすっとぼけながら聞いてくる。ふざけんじゃない、お前こいつと距離近すぎ。

「悪いけど木原はお前とはどこにも行かねーから」
「は?」

彼女はぱちくりと吃驚したように俺を見ている。もういい。これからああしようとかこうしようとかもう考えない。そんなこと考えてたら日が暮れる。そして、いつか誰かにコイツを取られる。
そんなの、絶対、絶対嫌だから。

「…国見くん…?」
「…後で話そ」

授業のチャイムが鳴った。男子は諦めて席についた。俺も自分の席に戻ろうとして、少し歩いて後ろを振り向いた。
彼女は少しだけ嬉しそうな顔で俺を見ていた。ぱっと視線をそらしたけど、内心こらえきれないものがたくさんあった。
本当、単純だなあ。俺も木原も。

「あっあの…」

授業が終わり、昼休みに入った。
彼女は話しかけてくる男子に断りを入れて俺のほうに駆け寄ってきた。汗すっげえ飛ばしてるなあ。俺は自分の弁当を持って歩き出した。向かうはあそこ、資料室の前の壁のところへ…。


20150915





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