君はきっと気づいていないだろうな。
俺がどう思っているかも。知ったら彼女はどうするのかな。なんて、考えてみたら怖い。拒絶されそうで怖いんだ。

「国見くん?ぼーっとしてどうしたの?」
「ちょっと考え事」
「そっかあ…あ、今度公式戦あるんだよね?見に行くよ。いつあるの?」
「来なくていいよ」
「えー。国見君の応援したいよ」
「別に応援しなくてもいいし」

及川さん見てまた惚れちゃったらどうすんのさ。あのジャンプサーブは誰が見てもかっこいいと思うし。そんなの、勝てっこない。それに俺だってがむしゃらにやってるわけではないから彼女からみてもあまりがんばってるようには見えないだろう。

「…じゃあ行かない」

あ、拗ねた。
一回拗ねたら機嫌が治るまで長いんだよなー。ほっといたらいいか。彼女はぷいっとそっぽを向いていた。…違うか、構ってほしいのか。仕方ない、と名前を呼ぼうとしたら。
ぶわっと風で彼女の髪が俺の顔に当たった。吃驚しながらも彼女の髪の毛を優しく掬うと、ぴくりと反応した。

「…いま、髪」
「風で当たったからよけてた」
「…う、そう」

なんだ?
とりあえずこっちに向いたので髪は当たらなくなったけど、彼女は髪の毛を手ですくっては落とした。
…潔癖?俺の手汚いかな。

「ごめん帰って髪しっかり洗って」
「え、何で謝る…」
「触ったから。俺の手汚いかもだし」
「え、ぜ、んぜん気になんないよ…」

今度はおどおどしてきた。
よくわかんない。でもまあこれがこいつだよな。気にしないとこ。
彼女の顔は少しだけ熱を帯びていて、もじもじとしていた。

「…なに。髪触られたのそんなに恥ずかしかったの」
「ち、ちがうよ!ただ…」
「ただ?」

口を紡いだ。もじもじとして次の言葉が来ないじゃないか。全く本当困る。こういうところほんとうざい。でも俺は待ってあげる。じーっとガン見してると彼女は潤んだ瞳で俺を見て。

「わたしの髪優しく触ってきたから…ドキドキしちゃった」

きょとんと俺は彼女を見て。彼女は顔を真っ赤にして。何だか今の光景シュールだな。ていうか今の言葉。
ドキドキした?何それ、何言ってんの。意味わかんね…。…そんなこというから、俺までドキドキしてきたじゃん。

「…ばかじゃねーの」

必死に振り絞ってでてきた言葉がそれで、でもそれには説得力も何も無くて。きっと今の俺は少しだけ顔が赤いのかもしれない。

20150912




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