俺と彼女の出会いは、実にシンプルだ。
元々同じクラスで、席が隣だった。最初から彼女はおどおどしていたけど、見た目は普通に可愛かった。目がくりくりしてて、肌が綺麗で。でもなんとなく苦手だなってことだけ考えていた。
暫くして、彼女はとある男子に告白された。彼女は二つ返事でOKしたらしく、男子が騒いでいた。彼女は下を俯いて、またおどおどして、少し泣きそうになっていた。
1週間たっただろうか、彼女はフラれたらしく、教室にシクシクと泣いていた。最初はみんな同情して大丈夫?などと聞いていたが。彼女はそれから彼氏を何人も作った。しかも惚れやすいのもあるため、女子がそれを受け入れなかった。いつしか教室で泣くのは減り、どこかに行っていた。女子もそっちのほうがいいなど他にも言っていたが胸糞悪くてそれ以上は聞いていない。

「木原だけまだプリント提出してないんだよ。木原呼んでプリント提出させてくれ」

担任にそう頼まれた。隣の席ともあって仕方がないなと腰を挙げた。しかし彼女はどこにもいない。たくさん、たくさん探して行き着いたのはあそこだった。資料室の前の壁にもたれかかって、シクシクとないていたのだ。それを見た俺が最初に思ったことは、「うわ、めんどくさい」だった。だって本当にめんどくさかったし。見なかったフリして担任に言おうかと思ったが、彼女と目があった。

「……」
「…国見、くん…?」

目をそらしていると、彼女から名前を呼ばれた。何だ、泣いてるけど普通っぽい。でも、何かめんどくせーな。

「ど、したの…?」
「…先生がさー、木原さんプリント提出してないからしろって」
「あ、そういえば…。ありがとう、国見君」
「うん」

あ、用終わった。
帰ろうかなー。…チラりと見ると彼女はまた涙をぽろぽろ流していた。何かこれで帰るのも人としてどうなんだ、と俺は思い、ゆっくりと彼女の隣に座った。

「わー、こっからみる空めちゃくちゃ綺麗だ」
「…え?」

本当に空が綺麗で。彼女も見上げた。「ほんとだ…」と横からか細い声で聞こえた。彼女と話したことはなかったが、意外と話せるなと思った。

「もうすぐ昼休み終わるけど」
「あっうん」
「いつもここで食べてんの?」
「…うん」
「ふーん」

下においてあった弁当箱を見て、俺はため息をついた。この子もこの子で、女子も女子で。まあ俺はその中に首突っ込む気は無いけど。会話なくなっちゃったなー。でも、まだグスグス言ってるし。

「…私ってめんどくさいかな」
「…は?」
「ぶりっこしてるって思うかな。ドジで鈍間とか、それ全部演技とか思うかな…」

耳たぶまで真っ赤になってるじゃん。長い髪が風にふかれて、顔に張り付く。泣き顔をこんな間近でみたの初めてだ。何も答えない俺に彼女はとうとう泣き出した。

「やっぱそう思うんだ…」
「俺何も言ってないんだけど」
「だって何も言わないってことはそうなんでしょ」
「あーもー、めんどくさいなー。思わないよ。木原さんは木原さんじゃん」
「そんな安い言葉受け取らない…」

うわ、この人まじでめんどくさい。
折角俺が励ましてやってるのに、何だその安い言葉って。初めて言ったし。はあ、とため息をついて空を見た。あー、やっぱ空綺麗じゃん。

「私どうしたらいいかな」
「そのまんまで良いじゃん」
「だって」
「うるさいな。俺がそのまんまで良いって言ったからそのまんまでいいの」

これ以上何か言われるとめんどくさくて適わない。彼女はなぜかその言葉にはケチをつけず、ただ俺を真っ直ぐ見た。

「本当にいいかなあ…?」
「いいよ」
「そっかあ…」

鼻水をずずっとすすり、へへっと笑った。…何だ、笑えるんじゃん。

「ていうかプリント」
「あ、提出しなきゃ…国見君ついてきてくれる?」
「えー」
「…じゃあいい」
「はーもう分かったよ」

それから何でか知らないけど、俺は彼女とずっと一緒にいる。彼女は俺の事を大切に思っているのが分かる。懐いているのも分かる。クラスの人に一緒にいるのはやめといたら?って言われるけど俺は離れない。何か、離れられない。

…うそ、離れたくなくなったから。
それが何でかなんて、説明する必要ないよね。でもいつから?って言われたら答えられない。だって、いつからかわかんないほどだから。

20150911




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