仲いいんだなあ、それにしても菅原君はまた言ってるし。澤村もだけど。あと二年かな?元気な二人にも茶化されて、東峰旭って愛されてるんだな。…って冷静に判断してる場合じゃない。一応これあたしも関係してるんだから。

「菅原君、だからそんなんじゃないって」
「わかんねーだろ、そんなの」
「もう、いい加減に…」

ね、と東峰旭に視線を向けると、カアアーと顔を赤くさせていて、ぎょっと目をひんむいた。え、えっと…。とりあえず顔赤くするのやめようよ、あたしまで赤くなるじゃん。とりあえずこの冷やかしから抜け出さねば…あたしは「行こう」と言って歩き出した。慌てて東峰旭もついてくるけど、後ろの澤村たちは「今から告白かーっ!?」と騒いでいて、うるさいなあ、ほんとに。

「ごめんな、あいつらあんなんで」
「ううん、全然大丈夫」
「言っとくから…」
「本当に大丈夫だから」

そう言って二人とも黙った。うわ、沈黙。でもさ、そんなに言われると傷ついてしまうじゃないか。東峰旭はあたしに興味ないんだって嫌でも分かってしまう。どうせ潔子ちゃんに知られるのが嫌なんだろうけど、さ。あんな美人近くにいるだけでもウハウハなのにね。きっと東峰旭は潔子ちゃんのことが好きなんだろう。ずっと好きで、だから誰とも付き合っていなくて、未だにこんな反応するんだ。きっと誰でもこんな反応してる。だから、あたしも勘違いしては駄目なんだ。ふと『楽しみだ』といっていた東峰旭を思い出した。あれは、きっと潔子ちゃんの好きな人のことを聞こうと思ってるのかな。うん、きっとそうだ。結構胸が痛むけど、良いんだ、話ができるだけで。

「潔子ちゃん、好きな人いないって!」
「…え?」
「これが聞きたかったんでしょ?」

思えば、あたしと東峰旭がここまで近くで、ここまで仲良くなれるなんて思いもしなかった。つい先日まで怖い、傍観してるだけでいいなんて思っていたあたしが、ここまで仲良くなれた。それだけで充分。ゆっくりと諦めていけばいい。どうせこの先進路のことで忙しくなるのは決定してるんだし。

「…ちがうよ」
「あ、そうなんだ」
「…俺が、一緒に帰りたかっただけだから…」
「……あ」

汗かいてきた。東峰旭が、あたしと一緒に帰りたかった、って、あれ?進路のことが聞きたかった…だけじゃないの?ちらりと東峰旭を見ると、へにゃりと眉毛を下がらせあたしを見ていた。…う、嘘。
なんだ、なんだこの雰囲気。あたしすっごい追い込まれてる気がする。何だろ、その、あたしは言わせてる?嬉しい反面、この話から遠ざけたいと思ったのだ。

「しっし、進路の話しよっか…」
「…青木さん」
「えっと、今日担任に就職先のね」
「俺青木さんのこと」
「言わないで!」

大声を出して、気づいた時にはもう遅くて。酷く傷ついた顔をしている東峰旭が見えて。あ、あたし傷つけちゃったんだって、ばかだなってすぐ思って。

「…あっ…あの、東峰くっ…」
「……やっぱ、ぼやけて見えただけだったか」

そう、ぽつりと呟いた。
きっと、今日のあのことだろう。
違う、違うんだよ。あたしは東峰旭が好きなんだよ、でも、あたしは相応しくないって、心の中でどこか拒絶してたんだ。きっと東峰旭はあたしといるよりも潔子ちゃんといるほうがいいって思ってしまって。それはすっごい勝手で、こんな機会二度とないと思うのに。でも、でもでも。

「…かっ勘違いだと思う!」
「え?」
「あたし、すっごいキモいやつだから!いっつも東峰君のこと見ててっ…そのくせ喋れないし背高いとかいって怖がって東峰君に嫌な態度とって…ストーカー見たく追いかけたりして…そ、そんなあたし、気持ち悪いよね!」

そう、ずっと思っていたこと。
こんな気持ち悪いことして、何も知らない東峰旭はあたしに告白しようとして。そんな騙すみたいなことしたくない。きっと今の話で東峰旭はあたしにドン引きだろうな。うん。東峰旭の顔が見れず、ぎゅっと服の裾を掴んで俯いた。
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