雨は午後から止んだ。まあどちらにしろバスなんだけど。進路の話は思ったとおり、凄く長くなってしまって、あたりはすっかり暗くなり、あたしは体育館のほうに歩き出した。
あ、まだ明るい…。練習してるのかな。東峰旭、どこにいるんだろう。失礼ながら体育館の中を覗かせてもらった。中には、オレンジ頭の男の子が、黒髪の男の子にトスをあげてもらっていて――

「…!」

言葉が出ないくらい、懐かしい。
あたしもあのぐらいなんて言えるわけないけど、高く飛んでいたな。あの男の子、身長低いのに頑張ってるんだ…。何か言われたりしないのかな、チビだからリベロに回れとか、しゃしゃんなとか…。ぎゅっと唇を噛みしめると、落ちたバレーボールがあたしのほうに転がってきた。ぱたぱたと走ってくる男の子。あたしはそのバレーボールを拾って、男の子に渡した。

「あ、あざーす!」
「すごいね、あんなに高く飛んで。練習頑張って」
「あっ、アリガトウゴザイマス!」

カタコトのようにお礼を言うオレンジ頭の男の子に笑みがこぼれた。面白い子なんだなあ。

「おい日向ァ!おっせーぞ!」
「おお!あ、じゃあ失礼します!」
「あ…東峰君、もう練習終わった感じ?」
「あ、旭さんは何か急いで片付けて着替えに行きましたっ」

急いで…。その言葉に口元がニヤけてしまった。「ありがとう」と言ったら「はい!」と言ってそのまま男の子のほうに戻っていった。もしかして、あの二人かな。潔子ちゃんが言ってた面白い1年生二人組、ってのは…。だとしたら、凄いな、鳥野は。今年はいいところまで行くんじゃないのかな。
なんて、ぼーっとしながら思っていたら、足音が聞こえ振り返った。東峰旭…!

「おっ青木」
「……澤村か」
「何だ澤村かって」

ムッとしながら聞き返す澤村に「なんでもー」と笑った。そこからぞろぞろと出てくる男子バレー部達。その中に背が高い人が…いた!

「東峰くんっ…」

少しだけ声が跳ねてしまった。見つけれたのが嬉しすぎて、東峰旭はあたしを見つけると駆け寄るように走ってきて、「ごめん、待ったよね」とねぎらってくれた。「今来たところだから」とあたしはにこりと笑いながら言った。後ろでヒューヒューと冷やかしが。

「お前らあついね〜」
「逢引かよ〜」
「あっ旭さんに彼女がいたなんてっっ」
「うおおお旭さーん!!」
「おっお前らっ」

わたわたとしながらとめようとする東峰旭にクスりと笑った。


20151002
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