休憩時間中、トランペットが吹きたくて吹きたくてたまらなくて指でロータリーを押す真似をしていたら私の頭にこつっと何かが落ちてきて「いたっ」と頭をさすった。机の上を見てみると、飴が置いてあった。

「飴ちゃんだ〜」
「この前のお礼」
「あ、榛名くんだ!ありがとう!」

榛名君は教科書片手にあたしをじろっとみた。何だ?私は首を傾げたが反応されなかった。私もじーっと見ると目があってぷいっとそらされた。ああ、もう。

「何かついてる?」
「何もついてねー」
「あっ分かった〜私が可愛くて見惚れてんだ〜」
「…ちっげーよ!」
「わっ髪くしゃくしゃ!」

髪をかき混ぜるように榛名君はその大きい手でわしゃわしゃと撫でた。なんだなんだ、照れ隠しか?チラリとみたけど髪で表情がみえない。もうなんなんだ。わかんないよ。

「じゃーな」
「うん、ばいばい」

手を振ったあと飴を見つめる。いちご味、だなんてかわいい飴を持っていらっしゃる。もしかして私のために買ったのかな。そう思うと頬はゆるゆるになって口角があがった。口に入れたら甘さが広がってとても美味しい。コロコロと舌でまわしながら授業の準備をしていると、女子がヒソヒソと噂していた。「柊さんて、榛名君と付き合ってるの?」今のがそう見えたんならあなたの目はおかしいよ。だってちょっとじゃれてるだけだもん。ね、榛名くん?

*

「実里、野球応援の曲もいいけどコンクール曲もお願いね」
「はい!」
「実里はうちの部で一番期待されてんだからね。がんばりなよ?」
「はい!」

地味にプレッシャーかけられちゃった。トランペット始めてまだ3年たつかたたないかぐらい。だけど、こんなこと言われたら頑張るしかないや。後輩の指導係としても頑張らなきゃ。

「うん、高い音出す時は、唇をもう無くすぐらいに薄くして、あとはノリかな!」
「ノリですかあ?」
「そうそう!意外といけるもんだよ!」

一年で初心者であるこの子。まだまだで音もつぶれてるけど、練習したらきっと上手くなるだろうなー。あー、コンクールの練習しなきゃ。今年の課題曲はWのやつで、自由曲はえーと、……これか。まあいいけど。はあ、とため息をついた。風が吹いて邪魔だから髪を結ぶ。その先には野球部が練習しているのがみえる。この学校サッカーのが有名なのにがんばってるなあ。パーと吹くと綺麗な音だと褒められた。ねえ榛名君、聞こえるかな。私の音、もっと聞いてもいいよ。

20150827

戻る


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -