あれから榛名君と会っても目を合わせないようになってしまった。だって榛名君むかつくんだもん。私は避ける癖にマネージャーさんにはあんな笑顔ってさ。私見たことないし。

「もう、やだなー」

頬杖ついてはあとため息。なんで私がこんなこと思うんだろう。もうあれもこれも榛名君が悪いんだい。榛名君が私のこと無視するからなんだから。そう思ってむかむかしてきて、無償に手が寂しくなって駆け出した。今お昼だし、いつもは昼練しないけどしてる子いるからしよっと!曲がり角を曲がって階段を駆け上がろうとしたら、誰かにぶつかった。

「んぎゃっ…ごめんなさい!」

ばっと顔をあげると、そこには榛名君と、ハルナー!と呼んでいた秋丸という人がいた。私は榛名君と認識した1秒、走りだそうとしたら自分の足がもつれてコケた。痛い…恥ずかしい…そんな思いをしながら立ち上がろうとした、ら。

「大丈夫かよ…」

やれやれと言った様子で私にてを差し伸べた。なんだそれ。そんなことしても機嫌は治んないんだから。ふんっと鼻を鳴らして起き上がる。榛名君はいらっときたのか「お前なあ…」と行き場のない手を握りしめた。

「人の親切はちゃんと受け取れよな!」
「何いい子ぶってんのばーか!」
「はあ?バカって言った方がバカなんだよばーーか!」
「ちょ、二人とも声大きいから」

秋丸君が私と榛名君をひっぺがす。たった今男子と取っ組み合いするかと思った。はあ、はあ、と肩で息をして、榛名君を見上げる。

「…そっちが先に無視してきたんじゃん」

嫌味をたっぷり含ませ、階段を駆け上がった。もう榛名君なんて知らない。一段飛ばしで駆け上がって、音楽室から楽器のケースを取り出す。音楽室から出ると、追ってきたのか榛名君がそこに立っていて、その横を通り抜けようとしたがしつこい榛名君は横を一緒に歩くように歩き出した。

「もう、何さ」
「…元はと言えばお前が悪いんだ」
「私何もしてないもん」
「お前はそう思ってても俺はされたんだよ」
「…意味分かんない」

私はギュッとケースを握りしめた。「秋丸君は」と会話とかまるで関係ない話題を出した。「お前に用があるから先帰っといてっつった。」と。私はふーんとだけ言って、そのまま空き部屋に入った。それでも榛名君はついてくるから、「今から練習するんだけど!」とキレ気味に言うと「こっちだってお前に話があんだよ!」と畳み掛けられた。

「私はお前じゃないもん!」
「柊実里だろ!」
「わかってんならそう呼びなさいよ!」
「柊実里!」
「そこは空気読んで苗字でしょ!」

何この茶番。本当に意味が分かんない。私はいつの間にか笑ってた。



20150830

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