「榛名君がわかんない」
「カレカノの倦怠期か」

私の目の前でネイルを塗るこの子にため息をついた。だってさ、あれ以来話しかけても無視するし、目があってもそらすし、クラスにもきてくれなくなった。なんでなんだよう。折角の私の男友達なのになあ。

「噂をすれば、榛名君だよ」

ぱっと廊下を見ると歩いている榛名君発見。立ち上がるが、足が動かない。…そうか。

「私いっても上手いこと言えないよ」
「じゃあやめときな」
「…」

そこはなんかアドバイスないのかよう。…いいけど。そんな冷たいとこも好きだけど。はああとまた席につく。さて、どうしようか。

「……」

榛名君がこっちをみていたことは、私は知らない。

*

「先輩今日音荒れてますね。音割れすごいですよ」

なんか気が立って楽器に当たっちゃった。ごめんねトランペット。大人しく吹くことに変えた私はミュートを入れて少し遊んだ。手を離したり手で触れたりしたら音がふわんふわんってなって楽しい。てか、ミュートした音がすごい好き。

「トランペット後で合わせまーす!できてないとこ練習しとくよーに!」

後輩からの元気のよい返事に圧倒されつつ私も練習。ここ少しだけピッチが下がるんだよね。だめだなあ。楽譜にぐりぐりと鉛筆で書き込んで、また吹く。だああロータリー押すの少し遅い!

「むしゃくしゃするなあ…」

ロータリーを指で押してるとトロンボーンの子が合わせようと言ってたきたのでトランペットだけで合わせたいからと断った。ここはピッチが合わないとダメなところだし、それだけで審査が違ってくる。目立つところでもあるんだし。…ちょっと外でよう。

「外練行ってきます!」

私はタオルを持って譜面台とトランペットを持って外に出た。むしゃくしゃした時は外にでて高いところで吹くのが一番いい!
ベランダに出てそこに譜面台を置いて、パーとチューニングB♭を吹いた。うん、やっぱりいい。ホールで吹くのが一番響いてる感じするけど、外は音が遠くまで響いて行く感じが好きなんだ。
もう思いっきり吹こう。目一杯吹いて、綺麗なメロディーのところは丁寧に吹いて。球部が練習しているところをちらりと見ると、榛名君が女のマネージャーさんとしゃべっているのを見えた。

「!」

すぐにアンブシュアが崩れた。
ぶりゅっと音にならない音が大きく響いて、私はトランペットを下ろした。
風がざあと吹いて、髪の毛が頬にあたるが気にしない。ただただ、その光景だけを見て。

「…無視しないでよ」

なんでマネージャーさんにはそんなに笑顔なの。
きっと君には聞こえないだろうね。なんて笑いながら、今さっき練習していた場所に戻った。

20150829

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