「実里何聴いてるの?」
「アヴェ・マリア」
「またそんなこってこてのクラシック…」

はあ、と友達はため息をつく。何でさ、いいじゃんクラシック。クラシック大好きで何がいけないのさ。よくピアノやってる人とかヴァイオリンしてる人とかでクラシック聴かない人いるけど、私ばりばり聴くから。洋楽とか邦楽もロックもその他諸々も。嫌いなものなんてない。音楽大好きだし。あー、聴いたら弾きたくなって来た。つい目を瞑って弾く真似をすると、また頭に何かぶつかって痛みが。何?と横を見たらあ、榛名君だ。手でこつんってしたんだ。「おはよっ」と挨拶すると、「お前、いっつもなんかしてんな」って言われた。

「仕方ないじゃない。音楽は神なの。ゴッドなの。榛名君もヴァイオリン弾く?あっ…すっごい似合わないアッハッハッハ!」
「勝手に想像して笑うな」

ポコ、と手をぐーにして私の頭を軽く殴った。「いて」と言ったけど本当はそんな痛くない。榛名君なんだかんだ優しいよね。この前は挙動不審だったのに。

「てゆーかお前、ヴァイオリンもできんの」
「そうだよー」
「すっげーな。お嬢様って奴?」
「あたしのご先祖様たちがね!今は普通の家!ヴァイオリンもお古だよ!」

実は異国の血が少し流れてたりして、と心の中で言った。でも血は薄まるばかりだよ。少し日本人離れしてるとしたら、普通の人より少し高い鼻と大きい目かな。自分でもくりっくりだと思う。まつげも多いし長い。その変わり眉毛は濃い。てゆーか髪の量も多いから困る。

「てゆーか榛名君。どうしたの?何か用?」
「…別になんもねーけど。ここ通ったら柊が見えた」

…あ。
榛名君が初めて、お前じゃなくて苗字で呼んだ。

「あ、この前の飴美味しかったよ!」
「おまえ声でっけえんだよっ…」

キョロキョロと周りを見渡しながら言うから私は不思議に思った。榛名君てたまに分かんないなあ。何をそんなに気にしてるんだろう。私がじーっと見つめると、榛名君はそれに気づいて少し照れながら頬を掻いた。「教室に戻る。じゃーな」と言って私の頭をぽんとまた、叩いた。…榛名君て、人の頭叩くの好きなのかなあ。髪の毛ボサボサになっちゃうんだけど。

「……あんたらイチャつくのやめてくんない?」
「あっごめん」
「あたしはいないように思われてたのね…」

はあ、とため息をつく友達。
だって、榛名君が話しかけてくるから。なんていっても怒られるだけだし。何も言葉が思いつかないまま括っていたゴムをとって髪を解いた。ミラーをセットして髪をまたくくりなおす。ここのところ熱くてたまらない。もう7月だし、コンクールは後一ヵ月後だし、野球応援は約2週間後…。

「がんばんなくちゃ!」
「ていうかあんたテストどうだったの?」
「ぎくり」
「おい」

赤点は免れたけど、ギリギリだったりするんだよな…。9時の方向に目線をそらすとぐりんと頭を友達のほうに向けられた。こ、こ、怖い。

「部活ばっかりしてんなよ?」
「は、はい…」

はあ。大変だ。部活に青春ささげちゃってるよ。


20150829

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