「コンクール曲〜がんばれ私〜」

思ったより難しくてアンブシュアが崩れる。でもへこたれるな私。ぎゅっとミサンガを握った。去年からずっとつけてる。今年こそは、頑張らないと。

「気合入ってるね」
「金賞とりたいので!」

誰よりも褒められたい。誰よりも上手いって思われたい私は、誰よりも練習を頑張る。絶対にサボったりしない。でもこの前高音でなくなったから時々休まなきゃ。

「お疲れ様」
「そっちも」

榛名くんは三回戦も突破で、ベスト8だ。すっごいなあ。私も頑張らなきゃってなる。

「お前の音、聞こえたよ」
「えー?わかってんの?」
「わかる」

あの時の音、まだ覚えてるからって。榛名くん、それ私をまたキュン死にさせるつもりだね。はあ、なんだか榛名くんの言うことすべてにきゅんきゅんしてる。意識したら、なんだか榛名くんに触れたいって思ってしまった。

「榛名君、ゴミついてるよ」
「おお、さんきゅ」

うそ、ついてなんかない。
とったふりして榛名くんの腕に触れた。わ、逞しい腕。すごいなあ、かっこいい。鍛えてるんだな…男の子の腕、だ。そっと触れるのをやめて、榛名君に笑みを送る。気持ちを告げることができないから、行動で。まだ言葉を紡ぐことができないから、まだ。

「最近よく笑うよな」
「そうかな?」
「可愛い」

ぼっと顔が熱くなる。
急に、不意打ちかましてくるから本当困る。分かってるよ、私が好きだって。だから尚更顔が熱くなる。

「……うるさい」

ぎゅって袖を握ってみた。ねえ榛名君、気づいるかな、私の気持ち。早く気づいて、ね。

「どうしたんだ?」

心配そうに私を覗き込む榛名君。ばか、違うでしょ。そういうことじゃないの。…榛名君、もどかしくてたまらない。好きの二文字が言えれば楽なのにな。


20150919

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