迎えた試合。
9時から始まるので集まるのは7時30分。すぐに集まって楽器をバスに詰め込み、そのまま少し寝た。
正直言ってあんまり眠れなかった。だって1試合目だよ?しかも初めてで、もうなんというかワクワクしてきた。
でも疲れてるのも確か。

着いた。すぐに楽器を運んで音だしチューニング。聞くと武蔵野第一はあんまり応援とかに力を入れていなくて、吹奏楽もただ応援したいだけで来ているだけらしい。いつも1試合目は見てみぬフリで、毎回2回戦で先生からの注意がくるらしく、3回戦目は絶対に出ることはできないみたい。それだったら全部出させてくれてもよくないか、って私はなるけどね。
まあ武蔵野第一ってサッカーのほうが有名だし、仕方ないけどさ。

「攻撃に回ったらすぐに吹くから!イニングのときに吹く楽譜用意しといてね!」
「はい!」

ドキドキ。イニングの時に吹く曲は…これか。よーし、吹くぞ吹くぞー!
出てきた選手達。何だか頼もしいなあ。後姿かっこよすぎる。あ、榛名君だ…。
後攻の武蔵野第一。あれ、榛名君ピッチャーじゃなかったっけ?違う人が投げるんだ…。わ、わ、怖い。わ、打たれた!けどフライでレフトの人がとった。ふう、セーフ!ていうかピッチャー体調悪いのかな。さっきからワイルドピッチが目立つ気がする。このままじゃ一塁に行かれちゃうよ。
ヒヤヒヤしながらも1回表が終わり、私たちは立ち上がりイニングの曲を吹く。よーし、がんばれー!!
うわ、早速アウトとった。早かったなー。ん、一塁までいけたぞ!よしよし、あ、吹かなきゃ!次は、えっと、次は…。

「…次のソロっ」

先輩のほうに向かって言うと、先輩は私を一瞥して、「あんたが吹きなさい」と言ってくれた。私は天にも舞うような嬉しさで、泣きそうになった。

迎えた私のソロ。ああ、今響いているこの音。ゾクゾクする。私のトランペットはどこまでも響いて、とても綺麗に聞こえた。その音楽とともにバットを構える選手。それは――

「(榛名君…!?)」

ソロの部分が吹き終わり、みんなで吹き始める。え、あれは榛名君だ!嘘、榛名君のヒッティングマーチだったんだ…!嘘、なんて嬉しいんだろう。榛名君のためのソロ。榛名君に繋ぐこの曲…。

結局、試合は5−3で武蔵野第一が勝った。私は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。ソロがたくさん吹けたこと、榛名君の投球がみれたこと。やっぱりピッチャーはかっこいいなあ。榛名君を応援してばっかりの一日だった、な。

学校に戻り、普通に授業受けるけど、野球部はまだ戻ってこない。ああ、色々あるんだなあ。大変だなあ。

昼休憩、漸く野球部は戻ってきたみたいだ。私は榛名君を探して教室を見に行ったが、そこにはいなかった。
色々探していたけどやっぱり見つからなくて、モヤモヤした気持ちのまま教室に帰ったら、丁度そこに榛名君がいた。

「は、るなくん…!」
「…よう」
「探してたんだよ!」
「…お、そうか」

何か照れてる。可愛いなあ。ニヤニヤしながら榛名君を見てハッとした。

「お疲れ様!かっこよかったよ!」
「…あざっす」
「たくさん打ってたしね!」
「……あのさ」

ぽりぽりと頬を掻きながら私を見る榛名君。何だ?」

「俺のテーマ曲?みたいなやつ…お前が吹いてた?」
「あ、うん…えへへ」

榛名君は少しだけ顔を赤くして「やっぱりな」って私とは違う方向を向いてぽそりと呟いた。もう、榛名君てばまた照れて。

「私、榛名君の前で泣いてたことあるじゃん…あれ、ソロのことなんだ。何だ、榛名君のやつだったのか〜。吹けてよかった!」

ニカッと笑うと、榛名君は顔を真っ赤にして、おう、というから私もニマニマが止まらなかった。嬉しいんだろうな榛名君。私もそんなこといわれたら嬉しくてたまらないもん。えへへ、にしても本当によかった。榛名君の…。
…え?

私、何時の間にこんなに…。

「俺もさ、その曲のこと聴きたくてお前探してたんだ。良かったよ、聞けて」
「あ、うん…」
「次で最後になるんだっけ?よろしくな」
「う、うん!がんばる…」

どうしよう、榛名君の顔が見れない。
そうなんだ、私、榛名君に凄いドキドキしてるんだ。


20150918



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